鳥に関わりのない人でもペンギンやペリカンを見た時にその仲間だと識別できるでしょう。
オウムやインコを見た際にはどうでしょうか。
大きければオウム、小さければインコ、といった認識が世間一般的ではないでしょうか。
オウムとインコは分類学的に異なる動物ですが、その違いは興味がなければ雑学程度のものでしょう。
クジラとイルカ、カンガルーとワラビー、ジュゴンとマナティの区別と似たようなものでしょう。
ここではオウムとインコの違いについて掘り下げます。
オウムとインコは、生物分類学、形態学的に明確な相違があります。
分類はどちらも同じオウム目ですが科は異なります。
オウムはオウム目オウム科、インコはオウム目インコ科やオウム目ヨウム科です。
(日本鳥学会など、オウム目をインコ目と表す流派もあります。)
日本では江戸時代以前にオウムとインコの区別は無かったとされます。
オウム、インコという表記は最近のものです。
過去を遡ると、「鸚鵡」「鸚䳇(古名)」「伊牟古」「音呼」「音呼鳥(インコチヨウ)」「鸚哥」「鸚(哥鳥)←一文字で」、
アフム(古名)、アウム
コトマナビ、モノイイドリ(毛乃伊比止)、ハクインコ、ハタン(巴且)、ハタンオウム、バタンオウム、コオウム、
など多彩にあるようです。
オウムという呼び名も語呂合わせだとか。
一音節読みで「恩(オン)」という字があります。
意味は「愛情がある、夫婦仲がよい」です。
「斌(ウ)」
「あでやかで美しい」
「陸(ム)」
「仲むつまじい」
この恩鵡陸(オウム)を直訳すると 「夫婦仲のよい、美しい、仲むつまじい(鳥)」であり
「夫婦仲の睦まじい美しい鳥」という意味からの語源だという説があります。
また、「鸚」の左辺「嬰」は「纓(えい)」のことで、「冠の後ろに尾のようにつける装飾の具。いろいろの種類がある。」という意味です。
記録に残るオウムの初渡来は1370年以上前の西暦647年(孝徳天皇大化3年)の日本書紀・続日本記など。
「オウム一双、孔雀一双神羅経由献上」とあります。
続いて656年にオウム二双、686年にオウム二双、、、以降ごく稀に輸入されていたようです。
内田亨博士(1953)によると、枕草子には「ことどころの物なれど、あふむいとあはれなり、人のいふらんことをまねぶらんよ」。異国のもので、人語を真似する。とあります。
オウム科の最大種はインドネシアの限られた島に分布するオオバタン。
この記事の最初に掲載している写真で「大型インコ1」と見出し付けられているオウムです。
全長は約50cm、体重は約850g
インコの最大種は南米ブラジルに分布するスミレコンゴウインコ。
同じく最初の写真で「夢おうむ」と商品化されている大型インコです。
全長は約100cm、体重は約1,500g
一般的な認識ではコンゴウインコをオウムとしている例は珍しくありません。
さらにコンゴウインコの分類はヨウム科なので、インコに縁遠い方には混沌とした分類かもしれないですね。
体重で最重量となるのはフクロオウムと呼ばれる地上性のオウムの仲間で、最大で4kg程度あります。
英名や現地語のカカポの名前の方が知られているかもしれません。
オウム目フクロオウム科に分類され、オウム科やインコ科とは科の異なる仲間です。
2019年に発表された化石
史上最大のオウムやインコの仲間が発見されたとして、2019年8月7日に英国王立協会の学術誌「Biology Letters」で発表されました。
史上最大のインコ ヘラクレスオウムオウム目オウム科の最小種はオカメインコ。
全長は約30cm、体重は約100g
オカメインコの和名はインコを冠していますが、オウム目オウム科オカメインコ属に分類されます。
数十年前であればシロビタイムジオウムを俗称でコハクインコと呼んでいたり、分類と同じく以前は曖昧でした。
インコの最小種はニューギニアに分布するケラインコ属の仲間で、中でもアオボウシケラインコが最小とされます。
最小記録は個体差も大きく影響しますが、11.5gで、平均体重でも僅か14g程度です。
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オウム目の分類は昨今ちょくちょく大きな変動もあり、あくまで定説分類としてですが
オウム目オウム科に分類される種は2008年現在で21種。
オウム目インコ科に分類される種は約400種です。
生物の構造と形態に関する形態学において、オウムとインコには多数の相違点があります。
- 胆嚢の有無(オウム有、インコ無)
- 頸動脈の配置
- 頭蓋骨の相違
- 羽毛の組織構造/Dyckテクスチャ(青/緑)の欠如
- 色素の相違
- 完全に骨化した眼窩リングと橋渡しされた側頭窩、勃起性稜と綿毛孵化子。
- 冠羽の相違
冠羽とは頭上の羽で、大雑把にいえば冠羽のあるものはオウムです。
但し、冠羽には例外もあります。
ヘイワインコには冠羽があります。
ただ、この冠羽はオウムのような可動式と違って飾り羽です。
可動式という点において、ボウシインコは興奮時にオウムの冠羽と同じ用に首周りの羽が隆起します。
その最たるがヒオウギインコで、エリマキトカゲのように広がります。
冠羽とは言えませんが原理は同じかもしれません。
オウムは南米やアフリカには分布しておらず、オーストラリアとその周辺だけに分布しています。
ただの呼称にすぎませんが、和名にインコと冠するオカメインコやモモイロインコはオウムです。米やアフリカには分布しておらず、オーストラリアとその周辺だけに分布しています。