黒い雀|Melanistic Eurasian Tree Sparrow

黒変種 メラニズム Melanism

先天性のメラニン過剰症によって黒化する現象、メラニズム(黒変種)

メラニン色素

メラニン色素

人の美容用語としてもよく登場するメラニン

とても有益な色素ですが、日焼け、シミ・そばかすの原因といったネガティブな印象をもたれやすいかもしれません。

褐色を司る色素で、皮膚や体毛、眼の色などに多大な影響をもたらしています。

メラニンの役割

メラニンは紫外線からからの防御という大きな役割があります。

それによって皮膚癌白内障をはじめ身体に及ぼすリスクを軽減しています。

日焼けで肌が黒くなるのはメラニン色素で黒くして紫外線を防ごうとしているのです。

※紫外線をUVと表記するのは、英語のウルトラバイオレットライトultraviolet light)の略です。

メラニンの生成

メラニンは皮膚の底部にあるメラノサイトという細胞で合成されます。

その稼働スイッチとなるのは紫外線の刺激反応です。

そして炎症ホルモン異常といった刺激にも反応します。

飼鳥では過剰な毛引きや自咬症によって羽色が変化することもあります。

鳥の色彩

メラニズムの雀

とても珍しいメラニズムの黒い雀メラニスティック スズメ(Melanistic Eurasian Tree Sparrow)。

これは色素代謝を司る遺伝子が変異したことでメラニンが過剰生成された現象です。

羽の色彩要因1

鳥の種類によって羽の色彩を決める要因は異なります。

鳥類全体としてもっとも多くの種で共通する要素

黒や茶メラニン色素 melaninユーメラニンとフェオメラニン)。

赤や黄や橙カロテノイド色素 carotenoid

そして構造色 structural color があげられます。

構造色は実体には存在しないにも関わらず見える色です。

例えばシャボン玉CDも構造色で、微細な光の加減で色が大きく変化します。

羽に含まれる色素と構造色によるハーモニーで多彩に表現されています。

羽の色彩要因2

ほかにもポルフィリン色素プテリン

オウムやインコ特有のシッタコフルビン psittacofulvins

ペンギン特有のスフェニシン spheniscin

エボシドリ特有のツラコバジンturacoverdin

紫外線による生物蛍光 biofluorescence

といった限定的な種に特有の色素もあります。

スズメの羽模様

スズメの羽色や羽模様メラニン色素による賜物です。

羽の色や模様羽軸から羽が伸びる際に作られていきます。

ラインプリンタが遠からずでしょうか。そのインクがメラニンです。

この超極小メラニン顆粒を出力制御ON/OFFして流し込んで描いています。

黒さレベル

このインクであるメラニンが多くなるほど色濃く、そして黒くなります。

どれぐらい過剰になるかは個々によるため一律で同じ用に色変化するわけではありません。

真っ黒なメラニズムに限らず、濃い茶色だったり変化の差はグラデーションです。

この写真のメラニズムも完全な黒化ではなく90%程度といったところでしょうか。

メラニズムとは3

黒を意味するメラニズム

先天的にメラニン過剰生成されて黒くなる現象メラニズムMelanism(黒色素過多症/黒変種)といいます。

メラニスティックMelanisticはその形容詞。

語源はギリシャ語で暗い色を意味するメラノスμελανός

学名にもよく用いられているメラノも同じ由来です。

例えばズグロシロハラインコの種小名のmelanocephalusも同様です

メラニズムとは4

メラニズムたち

メラニズムは鳥類に限らず哺乳類や爬虫類に魚類ほか多くの動物種で確認されています。

発生率は奇跡の確率から黒豹のように一般定着している種もあるなど様々です。

例えば「メラニズムの動物」といったキーワードで検索すれば数多くが表示されます。

メラニズムの鳥たち

鳥類で最初に記録されたのは1846年のフランスでアカアシイワシャコ

群れとして定着していましたが1865年に最後の群れも狩り尽くされています。

By Pierre Dalous – Own work, CC BY-SA 3.0

A black Page in the French partridge’s history: the melanistic variety of Red-legged Partridge Alectoris rufa

鳥類で有名どころは時おりニュースでも見るキングペンギンでしょうか。

発生率は約3万羽に1羽(0.003%)だそうな。

Melanism Penguin

生息数がキングペンギンの比ではないオオフラミンゴでは唯一1羽だけが確認されています

この個体は10年ほど前から今も地中海を沸かせています。

Melanism Flamingo

ほか、シジュウカラやフクロウなど幾つかの鳥で発見されています。

Melanism birds

メラニズムのオウムやインコたち

野生下のオウム目でもメラニズムは時おり発見されています。

最近ではモモイロインコが南オーストラリアのポートリンカーンで1羽目撃されています。

Adelaide Ornithologists’ Club

タケイオナガパプアインコ

メラニズムが定着した特殊なインコ、タケイオナガパプアインコ。

すべての個体が黒いわけではなく、通常色の赤型とメラニズムの黒型との二系統が存在します。

タケイは多型のことで、ミナミオナガパプアインコの亜種(Charmosyna stellae goliathina)です。


オナガパプアインコの分類は2020年に変更されており、オナガパプアインコの亜種ではありません。

かつて4亜種とされていた時の基亜種は単独種となりました。

学名:Charmosyna papou
英名:West Papuan Lorikeet
和名:オナガパプアインコ

残りはミナミオナガパプアインコ(Charmosyna stellae stellae|Stella’s Lorikeet)を基亜種として分離。

タケイオナガパプアインコはこのミナミオナガパプアインコ側の亜種です。

単独の標準英名はありませんが、Mount Goliath LorikeetやPolymorphic Lorikeetとも呼ばれます。

黒いセキセイインコ

飼鳥市場ではセキセイインコのメラニズム系黒品種が数年前から品種として確立されています。

主にベンガル圏で盛り上がりを見せています。

まだ日本で目にしたことはありませんが、遠からず入ってくるのでしょう。

メラニズムとは5

メラニズムの弊害

メラニズムとは色素代謝の異常であり、様々な身体への弊害をもたらす可能性があります。

そもそもの原因は色素の生成や分解に関与する酵素をコードする遺伝子の変異とされます。

その病型は多岐にわたります。

私の目にしたメラニズムは総数も僅かですが、クチバシ異常が数羽で見られました。
肝臓疾患に繋がるものだろうと推察しています。

もっとメラニズム

私では理解が追いつきませんが、詳しく解説されているサイトや論文は多々あります。

色素名で検索するだけでも沢山。

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