
だいぶ暫定です。
直しはしばらく掛かります…

ぬいぐるみのような容姿から繰り広げられるエネルギッシュで滑稽な動きは愛嬌と魅力に満ちており、一般的に想像されるであろうインコ像とは一線を画すインコ、シロハラインコ属の仲間たち。
シロハラインコ属とはシロハラインコの名を冠する4基亜種+1亜種で構成されるオウム目の分類です。
*2014 IUCN/BL
以前は2基亜種および3亜種として分類され、現在も標準和名は当時の2基亜種のみが設定されています。
頭部の黒いズグロシロハラインコと頭部がオレンジ色のシロハラインコの2種です。
新分類での標準和名は現時点(2022.1)では設定されていません。
昔からの通名を流用するのであれば、3種に独立したシロハラインコは、シロハラインコ、キモモシロハラインコ、キソメシロハラインコ、唯一の亜種となったニシズグロシロハラインコ。
基亜種:ズグロシロハラインコ
亜種:通名/ニシズグロシロハラインコ
基亜種:シロハラインコ(流通業者の通称:グリーンタイツ)
基亜種:通名/キモモシロハラインコ
基亜種:通名/キソメシロハラインコ

以下ここでの名称は上記に準拠します。
学名ではPionites(ピオニテス)、英名ではCaiqueと呼ばれます。
詳細は後述しますがCaiqueは旧Tupi語に由来します。
日本語カタカナ表記ではカイキ、カイケ、カイク、カイクーなどとされています。
但し、正確なTupi語による発音はカタカナ表記はもちろん、英語圏でも再現は出来ないでしょう。
シロハラインコたちの動きはヒインコの仲間を彷彿させます。
とはいえ、分布域は大きく異なり、食性も蜜吸ではなく、分類も大きく異なります。
シロハラインコ属の主な分布域は南アメリカ大陸のアマゾン盆地周辺です。
ざっくりとアマゾン川を挟んで北側にズグロシロハラインコ、南側にシロハラインコが分布します。
南米大陸を形の似た九州に例えるなら概ね北九州市・久留米市・熊本市・大分市を四方に囲ったあたり。
北九州や久留米市にズグロシロハラインコ、熊本や大分にシロハラインコといったところです。
日本では2010年頃からペットバードとしての人気が急速に高まりを見せています。
流通するシロハラインコの殆どはペルーやボリビア側に分布する当時でいうところの亜種キモモシロハラインコです。
当時は所謂グリーンタイツと呼ばれる種がシロハラインコの基亜種でした。
以下ここではシロハラインコ属の総合的な内容とし、それぞれの種についての詳細は別記事を用意します。

Black-headed parrot
Pionites melanocephalus

Green-thighed parrot
Pionites leucogaster

モシロハラインコについて
Black-headed parrot
Pionites xanthomerius
キソメシロハラインコについて
Yellow-tailed Parrot
Pionites xanthurus
その容姿はぬいぐるみのようでいて、挙動はヒインコたちを彷彿させるようなインコらしからぬものです。
複数羽でのじゃれ合いはプロレスのような派手なパフォーマンスで沸かせます。
床で転げ回る様子など、野生下において樹上生活を主としているとは思えないような動きです。
反面、やたらと布などでゴシゴシする仕草は熱帯雨林や雲霧林において濡れた木々で身体を洗う習性でしょう。
このぬいぐるみのような容姿とエネルギッシュで滑稽な動きこそシロハラインコ属の仲間たちの表面的な特徴と言えます。
構造形態的な特徴としては、薄い羽毛、短距離飛行用の翼、強い脚力、など。
羽毛の薄さは濡れやすくも乾きやすく、飛行距離や脚力の特徴とも連動した適応進化なのでしょう。
平均的な体格の大きさは概ねズグロシロハラインコ < シロハラインコです。
個体によっては逆転しますが、ズグロシロハラインコの大型な個体がシロハラインコの一般的なサイズといったところです。
但し近年の繁殖個体はどちらもとても小さい傾向にあり、シロハラインコでさえ200gを越えない個体が当たり前になっているようです。


ここでの分類はIUCN/BLI2022.2現在に則ったものです
mtDNA解析などの登場によってオウム目の分類も少なからず再編され、現在も更新は続いています。
しばらくは分類の統廃合ばかりでしたが、最近は亜種の昇格や再細分化も増えています。
その背景として絶滅危惧種種の保全の観点もあります。
よく絶滅危惧種が云々とありますが、基本的にインコは殆どが絶滅危惧種です。
もはや絶滅危惧種なのは当たり前で、危急種であるかどうかが問題になります。
亜種も含めた全体でそこそこの数がいたとしても、亜種が絶滅危急かもしれません。
そして亜種だけを国際法で規制することは基本的に出来ません。
シロハラインコもそんな種の1つとして細分化を後押しされました。
シロハラインコ属とは元々はズグロシロハラインコが主となる分類です。
飼育の始まり
シロハラインコ属の最初の飼育記録はイギリス鳥類学の父と呼ばれるジョージ・エドワーズ(George Edwards)によるものです。
1751年のことで、White-Breasted Parrotと名付けられたズグロシロハラインコです。

ブームのはじまり
日本でペットバードとしてシロハラインコの人気に火が付いたのは2005年あたりからでしょうか。
平成19年/2007年に発行された誠文堂新光社の愛鳥専門誌コンパニオンバード第7号の表紙をシロハラインコが飾り、大々的に特集されたことで油も注がれました。
当時は現在と比べればまだ多くの種が輸入されていましたが、その少し前の2003年だったかにオランダで発生した鳥インフルエンザは飼鳥流通に大打撃をもたらしました。
それは今も尾を引いています。
以来オランダからベルギーにシフトすることになりました。
2005年にはコバタンのサイテスI類登録など、この時期は結構な激動かつ終焉の頃だったのかもしれません。

高額市場の確立
日本を含む世界のペット業界でシロハラインコは高額市場を確立したと言えるでしょう。
このシロハラインコとはペルーやボリギア側に分布するキモモシロハラインコで、当時は亜種P. l. xanthomeriusとされていました。
※キモモシロハラインコやキソメシロハラインコという和名は標準和名ではありません。
このキモモシロハラインコのブームによって、より希少種のいわゆる緑太腿のシロハラインコやもう1つの亜種キソメシロハラインコはさらに高額帯での取引が約束されたことになります。
国際取引の規制に亜種の区分は無いため、キモモシロハラインコと同じ扱いで取引が可能なうえに超高額であればまさに金の鳥として標的になります。
シロハラインコの昇格
密猟の最有力ターゲットとなったシロハラインコを保全するためにも、2014年には国際保護連合IUCNの分類で3亜種の分離昇格が確定しました。
それまで一緒くたにRED-LISTカテゴリをLCとされていたシロハラインコたちでしたが、これによって大きく変わりました。
緑太腿のシロハラインコは非常に絶滅危機レベルの高いENとなりました。
キソメシロハラインコも次いで厳しいVUとなりました。
LC低懸念 < NT近危急 < VU危急 < EN危機 < CR深刻 < EW野生下絶滅 < EX絶滅 (*画像で作る)
シロハラインコのCITES I類
シロハラインコのCITES I類入りは、VUのニョオウインコよりも深刻度は高いので条件的には十分に有り得るのですが、CITESへの承認は難しいとは予想しています。
ただ、欧米はそれなりに数を確保は出来ているので、指定繁殖書の認可が可能なのであれば反対勢力はむしろ賛成派になるでしょうか。
ヨウムなどよりよっぽど希少な種が沢山いるにも関わらずヨウムが1類承認されたように、有り得なくはないかもしれません。
LCのキモモシロハラインコとの区別が難しいとは思いますが
CITESへの対応は非常に敷居が高く、インコブームの影響でこれまでの規制で公認された持続可能な捕獲数での取引も期待出来なくなります。
以前はズグロシロハラインコの基亜種と亜種1、シロハラインコの基亜種と亜種2で分類されていました。
2022.1月現在の分類はIOC版とIUCN/BLI版で異なり、ここではIUCN/BLI版を採用しています。
分類学においてシロハラインコ属とは下記の基亜種4および亜種1で構成されます。
分類学においてシロハラインコ属とは下記の基亜種4および亜種1で構成されます。
- 白い腹と黒い頭を特徴としたズグロシロハラインコとその亜種1
Black-headed parrot
Pionites melanocephalus melanocephalus
Pionites melanocephalus pallidus - 白い腹と緑色の太ももを特徴的としたシロハラインコ
Green-thighed parrot
Pionites leucogaster - 白い腹と黄色い太ももを特徴的としたキモモシロハラインコ
Black-legged parrot
Pionites xanthomerius - 白い腹と黄色い尾羽根が特徴的なキソメシロハラインコ
Yellow-tailed Parrot
Pionites xanthurus
1と2以外の和名は標準和名ではなく学名由来の通名ですが、名付けとして至極妥当です。

シロハラインコ属 Caique , Pionites とは
シロハラインコ属とは日本語での分類名です。
英語ではCaique(カイーク、カイク、カイク-)と表されます。
世界共通の名称である学名ではPionites(ピオニテス)と表されます。
これらの由来は後述します。
先住民語族トゥピ語を語源としており、水鳥あるいは水の上を滑る者といった意味です。 また、小振りでガッチリとした体躯がトルコ船を彷彿させることからの由来と言われます。 ここでいうトルコ船とは、エーゲ海やイオニア海での伝統的な木製の小さな商船で、caïqueと表記されます。 ギリシャ語でκαΐκι、トルコ語でkayıkと表記され、 トルコ船を由来が上記であるならば同意 水の上を滑る者というのは、濡れた葉で滑りながらゴシゴシしている様子でしょうか。 この由来については信頼に値する裏付けが弱く、調べ直し中です。
シロハラインコ属の学名Pionitesの語源はギリシャ語で、Pionとitesの2つにわけて意味を繋げます。 pīon , pinos → 太った、肥えた、ぽっちゃり itēs → 似ている 太った似ている、となりますが、何に似ているのかというと…

アケボノインコ属の学名Pionusの由来はシロハラインコ属に直接関係します。 pīon から pinos , pionias , pionus に変化してPionusになりました。 すなわちPionitesとは太った体型のアケボノインコ属に似ているという意味合いです。 二属とも柔らかい表現だとずんぐりむっくりでぽってりした可愛らしいシルエットを比喩した命名由来です。 この二属PionusとPionitesはどちらもドイツの鳥類学者J.G.Waglerによる命名です。 100年ほど前の書に現在の分類ではアケボノインコ属のシロガシラインコとメキシコシロガシラインコがWhite-capped Caique、White-crowned Caiquと記載されていました。
アケボノインコ属の学名Pionusの由来はシロハラインコ属に直接関係します。
pīon から pinos , pionias , pionus に変化してPionusになりました。
すなわちPionitesとは太った体型のアケボノインコ属に似ているという意味合いです。
二属とも柔らかい表現だとずんぐりむっくりでぽってりした可愛らしいシルエットを比喩した命名由来です。
この二属PionusとPionitesはどちらもドイツの鳥類学者J.G.Waglerによる命名です。
100年ほど前の書に現在の分類ではアケボノインコ属のシロガシラインコとメキシコシロガシラインコがWhite-capped Caique、White-crowned Caiquと記載されていました。
シロハラインコ属と縁の深いアケボノインコ属ですが、分子系統学においては話が変わります。
近年は飛躍的に分子生物学的研究による遺伝子分析が発展しています。
オックスフォードアカデミックに発表された2006年の研究論文で、新世界産インコArinaeのDNA配列が解読されています。
そして、シロハラインコ属はヒオウギインコ属と密接した関係にあることが明らかになりました。
さらにシロハラインコ属はコンゴウインコ&コニュアといった所謂コニュアの主流と同じクレードです。
アケボノインコ属はボウシインコ属、ワキアカボウシインコ属、ヨツボシミドリインコ属と密接な関係のあるアマゾン主流クレードです。
シロハラインコ属の親類はヒオウギインコ属で、アケボノインコ属とはもはや他人の空似といったところでしょうか…

シロハラインコ属が学術的に登場するのは17世紀の中頃。 1758年にズグロシロハラインコ Pionites melanocephalus が分類学の父カール・フォン・リンネによって登録。 日本は第9代将軍徳川家重による江戸時代。 その62年後の1820年にシロハラインコ Pionites leucogaster がハインリヒ・クールによってが登録。 日本は第11代将軍徳川家斉による江戸時代。 日本での文書による初登場がいつなのかはまだ追えておらずながら、所持している1917年/大正6年の書籍には鷹司信輔公爵によってシロハラインコが紹介されています。
- P. melanocephalus ズグロシロハラインコ基亜種
1758 CARL VON LINNÉ - P. leucogaster シロハラインコ基亜種
1820 Heinrich Kuhl - P. l. xanthomerius 亜種としてキモモシロハラインコ
1856 Philip Sclater - P. m. pallidus 亜種としてニシズグロシロハラインコ
1889 Hans von Berlepsch - P. l. xanthurus 亜種としてキソメシロハラインコ
1925 Walter Edmond Clyde Todd - P. xanthomerius キモモシロハラインコが亜種から種へ昇格
BLI&IUCN - P. xanthurus キソメシロハラインコが亜種から種へ昇格
BLI&IUCN

先に発見された種が分類の基準となるため、シロハラインコ属の基準となるのはズグロシロハラインコ P.m.melanocephalus です。 そうなると本来はシロハラインコ属ではなくズグロシロハラインコ属になりそうなものです。 手元にある大正6年の辞典ではシロハラインコのみが紹介されていたことから、ズグロシロハラインコに関する情報が無かったのかもしれませんね。

分布域についてはそれぞれの種の記事に詳細を記しますので概略のみ。 シロハラインコ属の分布域は、南アメリカ大陸のアマゾン川流域を中心に広がっており、アマゾン川を隔てた南北で棲み分けられています。 北側がズグロシロハラインコ、南側がシロハラインコです。 原産国では多数の国に跨るズグロシロハラインコに対し、シロハラインコはブラジル、ペルー、ボリビアの3ヶ国に留まります。 人間の線引きですが、国際取引においてこの違いは大きな差になります。。
分布域についてはそれぞれの種の記事に詳細を記しますので概略のみ。
シロハラインコ属の分布域は、南アメリカ大陸のアマゾン川流域を中心に広がっており、アマゾン川を隔てた南北で棲み分けられています。
北側がズグロシロハラインコ、南側がシロハラインコです。
原産国では多数の国に跨るズグロシロハラインコに対し、シロハラインコはブラジル、ペルー、ボリビアの3ヶ国に留まります。
人間の線引きですが、国際取引においてこの違いは大きな差になります。
アマゾン川の水銀問題
