
内容改訂は追々…

もくじ
スミレインコの分布域はブラジルの北東部からガイアナやベネズエラといった南アメリカ北東部周辺。
分類はアケボノインコ属で、アケボノインコよりは一回り小振りの中型インコで概ね200g±30g程度です。
ずんぐりむっくりした体型で、属名Pionusはそのぽってりスタイルを由来としています。
容姿は全体的に柔らかい雰囲気で、大きな眼とそれを引き立てるアイリングに耳パッチが印象的です。
可愛らしい顔立ちでありながら、鷹を彷彿させるような格好良さも併せ持ちます。
色合いに個体差は大きくあるものの、一見すると派手さはありません。
しかし、地味というわけではく、特に明るい場所では見違えます。
美しく映える菫色/ヴァイオレットやパープルを基調に紺や赤にピンクといった複数色が可変的に混ざった上品な羽色です。
アケボノインコ属の特徴である下尾筒(尾羽の裏側部分)の赤色は親和性が高く、翼の内側にはきらめく美しさの青紫色が蛍光します。
静か動の極論で言えば静のインコですが、好奇心は強くてアクティブであり、物静かなわけではありません。
近年における飼い鳥としては珍しい種で、かつて野生個体が数多く輸出されたにも関わらず繁殖個体は稀です。
ここではスミレインコについて語ります。アケボノインコ属や他の属鳥については別記事をご覧ください。

分類 | Pionus アケボノインコ属 |
学名 | Pionus fuscus |
🇯🇵和名 | スミレインコ / 菫鸚哥 |
🇬🇧英名 | Dusky Parrot / Dusky Pionus / Violet Parrot |
🇩🇪ドイツ | Veilchenpapagei |
🇪🇸スペイン | Loro Morado |
🇳🇱オランダ | Bruin Margrietje |
🇨🇿チェコ | amazónek tmavý |
🇫🇷フランス | Pione violette |
🇮🇹イタリア | Pappagallo fosco |
🇵🇹ポルトガル | Maitaca-roxa |
🇸🇷スリナム | Basrafransmadam |
🇬🇫仏領ギアナ | Jako Vyolè |
🇨🇳中国 | 暗色鸚哥 |
亜種 | ナシ |
性的二型 | 目立った性的二形ではありません |
サイズ | 24-26cm 170-220g |
クラッチ | 4-6 |
抱卵 | 26 |
足輪 | 8.5mm |
分布 | 南アメリカ大陸の北東部 |
ブラジル、仏領ギアナ、スリナム、ガイアナ、ベネズエラ、コロンビア最西部とベネズエラの国境付近 | |
CITES | Appendix II |
RED List | Least Concern 2016- |

学名とは世界共通の国際的な名称です。
スミレインコの学名は Pionus fuscus です。
1776年にドイツのフィリップ・ミューラー博士(Philipp Ludwig Statius Müller)によって登録されました。
前半部は属名、すなわちアケボノインコ属。
※Pionusの由来についてはアケボノインコ属全般の記事をご覧ください
後半部は種小名(種名)を表します。
この種小名「Fuscus」はラテン語由来で「Brown、Black、Dusky」といった意味です。
スミレインコの英名Dusky parrotはそこからの由来なのでしょう。
和名がこの直訳にならなかったことは幸いです。
スミレインコの標準和名は読んで字の如し菫色からの名付けです。
菫色とは国語辞典で菫の花弁の色、やや青みの濃い紫色とあります。

英語では菫色をViolet/ヴァイオレットと表記します。
ヴァイオレットの語源はラテン語のスミレの意味であるviola/ウィオラ。
同じく紫色仲間のヒヤシンスもラテン語でのhyacinthusを語源とします。
和名にスミレ色を冠したインコは他にも数種いますが、みな趣が異なります。
- スミレインコ ヴァイオレット色
- スミレコンゴウインコ ヒヤシンス色
- コスミレコンゴウインコ インディゴ色
- スミレガシラウチワインコ 頭部や肩袖に青紫がほんのり
- スジハラスミレインコ 顔部に赤紫色

スミレインコはアケボノインコ属に分類される新世界産インコの一種です。
学名は1776年にドイツのPhilipp Ludwig Statius Müller博士によって登録されました。
1776年といえば日本は江戸時代中期で、主な出来事に「平賀源内がエレキテルの復元に成功」とあります。
博士による学名はオウム目ではフィリピンオウム(Cacatua haematuropygia)やアカオウロコインコ(Pyrrhura picta)にミドリインコ(Brotogeris jugularis)ほか、多くの種で馴染みのある方ですが、代表をあげるのであれば鳥ではなくジュゴン(Dugong dugon)でしょう。
オックスフォードアカデミックによる新世界産インコのDNA配列発表やアマゾン国立研究所(Instituto Nacional de Pesquisas da Amazônia)のCamila Cherem Ribas博士らによるアケボノインコ属の系統分類の研究論文によると
アケボノインコ属はボウシインコ属、ワキアカボウシインコ属、ヨツボシミドリインコ属と密接な関係のあるアマゾン主流クレードです。
そしてアケボノインコ属はまず2つに分岐されるのですが、これをグループA、グループBとします。
スミレインコはグループBで、アケボノインコモドキとヨゴレインコと同じクレードです。
さらに、スミレインコは古くから確立されており、枝分かれが無く、亜種も存在しません。

- アケボノインコ/アオアケボノインコ
- ドウバネインコ
- メキシコシロガシラインコ
- バラガシラインコ
- シロガシラインコ
- アケボノインコモドキ
- ヨゴレインコ
- スミレインコ


スミレインコは南アメリカ大陸の北東部あたりに広く分布します。
渡り鳥ではありませんが、乾季と雨季で内陸側と沿岸側を移動する漂鳥です。
国としては、ブラジル、仏領ギアナ、スリナム、ガイアナ、ベネズエラ、コロンビアの6カ国。
生息標高は海抜1,200mまでとされ、主に600mまでの低地がメインになるようです。
アケボノインコ属としては最も低い標高に生息するグループとされています。

スミレインコの主だった生息地は熱帯雨林、雲霧林、湿地林など。
この川に浸かった湿地林は、Tupi語で根の森を意味するIgapó(イガポ)と呼ばれています。
また、アマゾン川流域の水が氾濫する森や草地といった湿度の高い低地はVárzea(ヴァルゼア)と呼ばれています。

eBird/TheCornellLabに掲載されている観測位置から幾つかを抜粋してみます。
GoogleMapの位置情報に合わせ、生息地の雰囲気を多少なり感じることが出来ればと思います。
ブラジル北部の仏ギアナとの国境付近にある保護区です。
熱帯雨林における世界最大の国立公園で九州よりも広い38,874km2
アマゾンが加速度的に消失しているとはいえ、やはりスケールが桁違いです。

ブラジルのロマイア州の州都ボア・ビスタの南にあるヴィルア国立公園。
2014年の鳥類観測調査ジャーナルにはアケボノインコ属ではスミレインコとアケボノインコが記載されています。
ボア・ビスタについては、コガネメキシコインコ図鑑の記事で詳しく記載しました。
コロンビアは最西部のベネズエラとの国境付近にある丘陵地帯の保護区です。
このシエラ・デ・ペリジャ国立公園(Sierra de Perijá National Park)と東隣にある南米で最大級の湖「マラカイボ湖(Lago de Maracaibo)」の西側にスミレインコの小さな群れが観測されています。
他にも多数の地区がありますが、ひとまずこの辺で。

国際自然保護連合IUCN RED-Listにおける絶滅危惧懸念は低リスクのLC:Least Concernとされています。
しかし、実際のところ生息数はよくわかっていません。
分布域が広大で、観測は困難とされています。
ただし、主に開拓等による生息地の消失で減少傾向にあるともされています。
アマゾンの森林減少は急速かつ深刻な状態が続いており、スミレインコを含めて多くの種での減少要因とされています。
ペットバードとしての捕獲驚異も低いとされています。
ペットバードとしての流通するアケボノインコ属のインコは5種で、CITES等で記録された国際取引でスミレインコは5種中の4位です。
矛盾しますが、ペットバードとしての人気は低い方が良いですね。
とはいえスミレインコは、もし人気が出ればターゲットにされやすい下地が大いにあるとは思います。
昔のような頻度や単位では無いものの、スミレインコは現在でも稀に南米便で入ることがあります。
水際での摘発記事をチラホラ見かけますが、定番のガイアナやスリナムだけではなくアルゼンチンなど周辺国への移送中というものも目立ちます。
原則として日本に輸入されるものは正規輸入であり、持続可能な捕獲数で認可されたもので何ら問題はありません。
ただ、実態として現地に集まる個体たちは密猟されたものが多いようで、過酷さと生存率の低さが際立ちます。
過酷な環境は感染症の発症と蔓延にも直結します。
それは無事に消費末端に辿り着いたとしても健康状態に問題を引き起こしているかもしれません。
密猟は貧困からの生活手段という根底もあり、そもそも消費者でありネットで可愛らしさを紹介して需要を助長している立場から無責任に非難出来るものではありませんが、そういった背景の理解と認識は必要だろうとは思います。

スリナムの定番密猟地PeleluTepuの空港での摘発。こうしたハブでの摘発記事も珍しくはありません。
スミレインコをはじめ、ヒオウギインコ、シロムネオオハシ、ヒムネオオハシが見えます。
こうした鳥たちが保護センターで野生復帰へのリハビリを行う間に感染症に感染し、野生下に持ち帰るということも問題になっています。
国際取引数
アケボノインコ属で最も国際取引されてきた種はアケボノインコモドキです。
2位のアケボノインコよりも40%ほども差があります。
さらに大差をつけての3位にメキシコシロガシラインコ、そして4位のスミレインコ。
5位のドウバネインコはスミレインコの30%程度しかありません。
逆に考えるとドウバネインコは繁殖成功率が高いのかもしれませんね。
仏ギアナやスリナムとの国境を有するブラジルのアルパー州においては、11月に営巣を確認しているようです。
ブラジルは日本とは逆に北へ行くほど暑く、夏は概ね11月~4月。
※内容まとめ直し中
スミレインコに限らずですが、発情期には普段より色濃くなります。
スミレインコの繁殖は適度に難しいとされています。
かつて大量にワイルドが輸出されたにも関わらず、繁殖個体はあまり根付いていません。
但し、難しい種であってもペア次第という側面は大きくあるようには思います。

スミレインコを含め、アケボノインコ属のヒナはヤギのようなメェメェ鳴きをします。
すべての種を聞いたわけではありませんが、おそらく共通するものだと思われます。
また、孵化前からのコンタクトコールは、発情期の交尾鳴きと似た甘え鳴きです。

果実や種子に葉、虫やら岩やら数多くのものを食べている中の1つに「Eschweilera」と「Micropholis sp.」の実?を食べているという記載があります。
Eschweileraの花はクチナシに似ているように見えますが、また追々に。
※内容まとめ直し中
色変わりの品種確立は現在のところありません。
但し、突然変異としてのルチノーは存在します。
スミレインコ x メキシコシロガシラのハイブリッドが存在します。
アケボノインコ属全般に言えることですが、呼吸器疾患、アスペルギルス症が多いといわれます。
クシャミや鼻水をしている個体は多いように感じます。
これらは多湿である生息地の気候とのギャップによるものだと考えています。
また、パニック時には突進して暴れまわる印象です。
ワイルドの輸入時には詰爪や鼻腔の欠損がとても多く、死亡個体も珍しくないのはそのあたりの影響もあるかもしれません。
熱帯雲霧林に生息するインコたちの皆が皆そうではないものの、サザナミインコと遠からず通じるような霧吹き浴びをします。
南国のバードパークではスコールがくるとケージ番線にしがみついて似たような仕草で絶叫しながら豪快に翼を広げて濡らしているシーンをよく見ます。
シロハラインコ属のように、濡れた大きな葉っぱなどに身体を押し付けてゴシゴシするような仕草を見たことはありません。
スミレインコにおける美点と難点をあげるとすると
美点
- 可愛らしい容姿(ブサイクを見たことがない)
- 本質的には穏やか
- 200g前後級としてはケージ掃除が比較的楽
難点
- 絶叫鳴きは非常に耳障りでウルサイ
- 季節の節目に弱い
- ボウシインコほどの声真似は期待できない
- 羽觴?が多い(脂粉ではない)
普段の小さくチュイチュイ可愛く鳴く声とは異次元の絶叫鳴きをします。
我が家の歴代インコたちにおいて、騒音デシベル計で計測した数値としての声量ナンバー1はコンゴウインコとオオホンセイインコですが、耳障りレベルはスミレインコの方が上です。
但し、これは復数羽での大合唱団なので相乗効果もあります。
それに、スミレインコは白色オウムのような無限鳴きはありません。
とはいえ、スイッチが入った際には邪魔をしても鳴きやみません。
絶叫が耳障りかどうかは完全に主観ですが、リスクを伴うという点においては留保すべきポイントではあると思います。
静かである可能性が低いとも思いませんが、静かならラッキーぐらいの腹積もりであることを勧めます。
そもそものポテンシャルとして、ノイジーなアマゾンのジャングルを群れで呼び合うための絶叫鳴きの質が細くて小さいわけがありません。
一概に性質として捉えるには漠然としたものであり、あくまで経験上の一例に過ぎません。
弱い相手には強く出る傾向はありますが、積極的ではありません
攻撃的な相手にも反撃に出ることはありますが積極的ではありません。
同属内でのいざこざは多々あります。
改訂は追々