鳥ボルナ病|オウムやインコのトリボルナウイルス感染症

はじめに
現状2020年10月時点でトリボルナウイルスについて鳥飼いに向けた日本語解説が見当たらず、インコ飼い視点として現状の自分用の忘備録をまとめたものです。

この記事に限らず、信頼度の高いと思われる複数の発信元からの情報をあくまで自分調べの自分用としてまとめていものです。
参考にする記事や論文の多くは外国語であり、その場合は翻訳ソフト頼りの自己補完です。
仮に正しくとも特に進歩の早い分野では情報が古くなっている可能性は濃厚です。
参考になれば幸いですが、鵜呑みにせず気になる点は調べ直してくださればと思います。
トリボルナウイルスはズーノーシス?
トリボルナウイルスはオウム病のように人への感染を過度におそれる必要はありません。

トリボルナウイルスは哺乳類で増殖しないため、定説として人獣共通感染症(Zoonoses)ではありません。

但し、スズメ目と水鳥のトリボルナウイルスは人獣共通感染症の潜在性があると考えられています。(JBSA 2016 No15 p28 牧野晶子、朝長啓造)

実生活において人獣共通感染症になる可能性は無いと思いますが、まだまだ未知であり今後の研究に注目です。

哺乳類のボルナウイルスは人獣共通感染症

哺乳類のボルナウイルスは人獣共通感染症です。

2015年にはドイツにおいて3名の高齢者(63,62,72歳)が相次いで致死性脳炎で死亡して話題となりました。

発病から亡くなるまでの2~4ヶ月に行われた様々な検査で病原体は検出されなかったものの、3名は中米に分布するカワリリス(変わり栗鼠|Sciurus variegatoides)のブリーダー仲間でした。

その後、フリードリッヒ・レフラー研究所(FLI/ドイツ連邦動物衛生研究所)によってカワリリスボルナウイルス(VSBV-1)として同定され、咬傷から感染したと考えられています。
image source wikipedia カワリリス
ボルナウイルスとは…要約
狂犬病ウイルスエボラウイルスと同じモノネガウイルス目に分類されるウイルスです。

塩基数≒8900の一本鎖マイナス鎖RNAをゲノムにもちます。

他のRNAウイルスとは一線を画する特殊な存在です。
1985年に人の精神疾患におけるボルナウイルス大規模調査以降に積極的な研究が進められています。

2008年トリボルナウイルスが発見されました。

トリボルなウイルスの発見以降はステージが変わり、多様なエキゾチックアニマルからの同定が続いています。

ウイルス研究において非常にホットな分野です。
あいにくボルナウイルスの研究を掘り下げれて理解出来るようなスキルは持ち合わせておらず、あくまで鳥ボルナ病への探究心からの脇道程度の話ですが、素人なりにも興味深くて奥深い世界です。

日本では京都大学ウイルス研究所の朝長教授の研究室が有名で、偶然にもこちらの研究室の目の前を頻繁に通るのもあって私のボルナウイルスへの敷居が低くなっています。
鳥ボルナ病とは…要約
ここではトリボルナウイルス感染症による総じた病名をCBL真田先生による表記「鳥ボルナ病」に準拠いたします。
  • トリボルナウイルス(Avian Borna Virus : ABV)
  • トリボルナウイルス感染症(Avian Bornavirus infection)
  • トリボルナウイルス性神経節神経炎 (Avian Bornaviral Ganglioneuritis : ABG)
鳥ボルナ病とはトリボルナウイルスが主に神経組織に感染することで引き起こす消耗性疾患/免疫性疾患で、様々な症状を示します。症状の詳細は後述します。

飼鳥界において蔓延している可能性が高く、近年非常に注目されているウイルスです。

直球でぶつかってくるサーコウイルス(PBFD)やポリオーマウイルス(BFD)とは違う印象です。

陰性証明はあまり信頼できず、発症年齢に安全圏もなく、withボルナが当たり前かもしれないとすれば相当やっかいな存在です。
ボルナウイルス感染症の由来
ボルナの名称はドイツの東端でチェコとの国境であるザクセン州のボルナという街の名前が由来です。

最初のボルナ病は1885年にボルナで騎兵隊の軍馬に奇妙な運動障害が報告され、1890年には大流行となりました。
ザクセン州ボルナの場所
1924年にはボルナ病を発症した馬の神経組織をウサギの頭蓋内に注射することで感染させることに成功し、1926年にボルナウイルスが同定されました。(Wilhelm Zwick博士)

その後、数々の動物でボルナ病が確認され、2008年にはPDDを発症したオウムからトリボルナウイルス(ABV)が同定されました。

トリボルナウイルスの同定とPDD
トリボルナウイルス(ABV)が同定されたのは2008年。

PDDを発症したオウム(コンゴウインコ?)からABVが同定されました。
PDDとは1970年代後半にMacaw Wasting Disease(コンゴウインコ消耗性疾患)としてアメリカとヨーロッパで報告され、1983年にPDD(Proventricular Dilatation Disease/腺胃拡張症)とされた疾患です。

PDDはコンゴウインコ特有のものだと考えられていましたが、2009年には飼育下と野生下の80種から確認されました。

野生下でのトリボルナウイルス
AVGは古くから存在し、近年発生したものではありません。

鳥類のトリボルナウイルス(ABV)は、カナダガン、白鳥といった渡り鳥やダチョウにカラスほか、水鳥、スズメ目、平胸類、猛禽類など多くの種が世界中で多数感染確認されています。

トリボルナウイルスの発生源
発生源は諸説あるようですが、ブラジルの野生下で確認された陽性のインコについてはリハビリセンター収容時に感染した個体が放出されて広がっている可能性が指摘されています。

持論ですが飼育下のオウムインコに関しても同様にワイルド乱獲時代の大量輸送時に浸透したと考えるのが自然だと感じます。

トリボルナウイルスの分類
ボルナウイルスは国際ウイルス分類委員会によって1 種で構成されていましたが、京都大学朝長研究室による発見によって2014年には6種に変更され、その後さらに2019年までに4度の変遷があります。

2020年現在において、トリボルナウイルスの分類はオウム目(1型、2型、未分類)、スズメ目(1型、2型)、水鳥(1型)と、それらの細分化で構成されます。

リボウィリア Riboviria
オルトルナウイルス界Orthornavirae
ネガルナウイルス門 Negarnaviricota
ハプロウイルス亜門 Haploviricotina
モノネガウイルス綱 Monjiviricetes
モノネガウイルス目 Mononegavirales
ボルナウイルス科 Bornaviridae
オルソボルウイルス属 Orthbornavirus
Psittaciform 1 orthbornavirus

オウム目:インコボルナウイルスPaBV-1~PaBV8型の8種類
オウムボルナウイルス(Parrot Bornavirus :PaBV)


スズメ目:カナリアボルナウイルスCnBV-1~CnBV-3,キンパラボルナウイルス(MuBV-1),カエデチョウボルナウイルス(EsBV-1)
カナリアボルナウイルス(Canary Bornavirus :CnBV)
キンパラボルナウイルス(Munia Bornavirus :MuBV))
カエデチョウボルナウイルス(Estrildid finch Bornavirus :EsBV)

水鳥:水鳥ボルナウイルス(ABBV-1,2)
水鳥ボルナウイルス(Aquatic bird Bornavirus :ABBV)

image source wikipedia
トリボルナウイルスの遺伝子型による違い
オウム目と水鳥では遺伝子型が異なり、地理的地域は明確に関連していないようです。

オウムに対して最も毒性が強いと特定された遺伝子型はPABV-2およびPABV-4。

オカメインコでのいくつかの研究結果では、PABV-4がより神経学的な兆候に関連し、PABV-2は主に胃腸管に影響を及ぼし、より重篤な疾患の進行を示しました。

キンパラボルナウイルスMuBV-1はオウム目には感染しない。

キンパラボルナウイルスMuBV-1はスズメ目であるジュウシマツ、カナリアには感染する可能性が強く示唆されています。

トリボルナウイルスPaBV-4の感染発症実験

2020年現在において、 飼育鳥からの調査で最も多く検出されている遺伝子型はPaBV-4型

PaBV-4に感染させた復数羽のオカメインコで実験したところ、PDDを発症した個体と無症状の個体がいた。

PaBV-4はPDDの病因になりうるが、感染したからといって発症するわけではない。

PaBV-4を感染させたオカメインコと非感染とで同居させた実験では感染が確認されなかった。
※期間やケージサイズは?

PaBV-4に感染鳥が産んだ発育卵にウイルスが検出された。/感染率は未記載

トリボルナウイルスPaBV-2の感染発症実験

PaBV-2を復数羽のオカメインコへ筋肉注射し、PABV-2の広がりを追跡した実験。

接種部位と隣接する神経、次に脊髄、そして最後に脳にウイルスが存在することが明らかになった。

114日間の実験で、ウイルスは胃腸系、副腎、心臓、腎臓にも広がった。

PABV-4でもPABV-2と同じく検査で陽性となった多くの鳥が症状を示さないこともよく知られている。

鳥から鳥への伝播

主に、直接接触,糞便摂取,乾燥糞や羽埃からのエアゾル吸引の可能性が示唆されています。

定説として、トリボルナウイルスの感染力は弱く「鳥同士の長期にわたる密接な接触が必要」と考えられています。

とはいえ、繁殖場や動物園などで集団感染しているケースは多々あり、世界中の飼鳥においてキャリアやホルダーは様々な鳥種で相当な数がいると推測されます。

垂直感染

親鳥から卵への垂直感染が確認されています。(Dahlhausen)

PaBV-4に感染鳥(おそらくオカメインコ)が産んだ発育卵にウイルスが検出された。/感染率は未記載

水鳥ボルナウイルスに陽性のカナダガンが産んだ卵から孵化したヒナへの垂直感染が調査され、否定的な結果となっている。Journal of Avian Medicine and Surgery vol.26

確実に感染するわけではない。感染率は不明。

(アオコンゴウの論文でPDDかボルナウイルスの記載があったはず。要確認)

飼育下における感染数

まだまだ調査数が少ないという前提で。

推測では飼育下の鳥の10%から45%が感染しており、健康な飼育下のオウムの少なくとも3分の1がボルナウイルス陽性である可能性があるともいわれます。(数値の根拠は弱いように感じるが、実際に多い)

陽性の鳥は増え続けているが、臨床症状の鳥は少なくなっているとも言われます。

臨床疾患の発生率が低く、重篤な疾患の発生率はさらに低いことも考慮しなければなりません。

Lierz Mの研究によると採取したサンプルからの検出率は34.3%で、高ストレス下で飼育場で100羽以上を検査した中では52%、2012年には別の高ストレス飼育所で71%の陽性率であったとされています。

2011年の調査では、80羽のうち33%がPCRで陽性。50%以上が抗体をもっており、PCRでは陰性。という興味深い結果。

ブラジルの診療所および繁殖施設からの32羽のボルナウイルス陽性鳥の調査では、違法取引から没収された数羽を含め、苦しんでいる鳥の66%がCNS症状を示し、22%がGI徴候を示し、9%が死亡。

ボルナウイルスは場所によっては高い感染性を示すことが観察されていますが、ウイルスの拡散の実験室試験では、特定の信頼できる感染経路はまだ特定されていません。

鳥ボルナウイルスに影響を受けやすい鳥種

サンプル数が少なく偏りが出てしまうだろうという想定を踏まえた上での感染率。
Dahlhausen R, Orosz S.によると

発症例の多い種
オウム、ボウシインコ、オオハナインコ、ヨウム、コンゴウインコ

発症例の少ない種
オカメインコ、セキセイインコ、アケボノインコ、コニュア

CBL真田先生による2017~2020の検査結果では、高いものから順に
オオハナインコ、コニュア、ボウシインコ、アケボノインコ、モモイロインコ、オウム、オキナインコ、コンゴウインコ、ヨウム、ハネナガインコ、キキョウインコ、オカメインコ、ラブバード、シロハラインコ

症例の無いものとして、セキセイ、マメルリハ、サザナミ、ホンセイ、ローリー

あくまで主観としては、PDDが元々コンゴウインコ特有の疾患と考えられていたのはスタミナやサイズが大きくてわかりやすく、検査や検死にお金を掛ける率も高いからこそ気付かれていたのだと考えており、現状を見るに感受性に程度の差こそあれ、おそらくオウム目の殆どで罹りうるのではないかと考えています。

感染しやすい年齢、潜伏期間

トリボルナウイルスは長寿命の細胞である神経細胞に定着します。

タイハクオウム、オオバタン 、 アカコンゴウインコ 、 ナナイロメキシコインコでの調査によると、一人餌になっていないヒナや免疫力が低下した個体は特に感染しやすく、推定潜伏期間は2~4週間と推定されています。(スミス&スキラー)

不活性化のまま数年、数十年、一生という場合もあるようです。

CBL真田先生による2017~2020の検査結果では、1歳~3歳、10歳以上の2つで山があり、間には谷間があるという興味深い統計があります。

≦1ヶ月齢:0%
≦3ヶ月齢:3%
≦6ヶ月齢:6.7%
≦1歳齢:13%
≦3歳齢:15.9%
≦5歳齢:5%
≦10歳齢:9.1%
>10歳齢:15.2%

垂直感染するとされているにも関わらずヒナヒナでは皆無、3ヶ月程度でも低い。
ヒナヒナ期に発症していれば漏れなく死亡しているのか、そもそも検査数が少ないだけかもしれません。
また、これらの陽性のうち約半数は無症状だそうです。

トリボルナウイルスの発症トリガー

キャリアが発症する最大の要因は過度のストレスと考えられています。

狭い場所に多数が押し込められた環境などもトリガーになりうる環境であり、1970年代のワイルド乱獲時代の大量輸送時に浸透したと考えられます。

R. Dahlhausenは、臨床疾患の発症を次の素因に起因すると考えています。

遺伝学、年齢、関与する宿主種、および宿主の免疫系の発達能力または障害状態。

栄養失調、併発疾患、生殖活動、不適切な繁殖によるストレス。

ストレスは、ABG / PDDの活性化または再発の主要なトリガー。

親鳥は繁殖期に再発や新しい症状を引き起こす可能性があがるとされています。

活動状態と休眠状態を循環しており、ホルモン状態の増加によるストレスが免疫力を低下させて状況を悪化させると考えられています。

陽性であっても症状で苦しんでいるとは限らず、数年単位あるいは生涯を休眠で過ごすこともありえます。

鳥ボルナ病の進行

トリボルナウイルスは神経細胞に定着します。神経細胞は長寿命の細胞であることからトリボルナウイルスも長く存在することが可能になります。

進行は非常に早い場合もあれば遅い場合もあります。

活動状態と休眠状態を循環しており、ホルモン状態の増加によるストレスが免疫力を低下させて状況を悪化させると考えられています。

鳥ボルナ病を発症した場合の症状

鳥ボルナウイルスを発症すると主に「神経症状」や「消化器」に症状が出ます。

致命的な髄膜脳炎から些細な神経症まで幅が広く、進行速度も非常にムラがあります。

体性神経に影響をうけると「知覚神経」「運動神経」「混合神経」。

自立神経に影響をうけると「交感神経」「副交感神経」。

主な症状群

消化器系の筋肉の動きを制御する細胞が標的となりやすく、腺胃といった胃腸の運動性が低下する機能障害、吐き戻し、食欲不振、宿便、未消化弁、体重減少/痩せなど

他にも沈鬱、運動失調、頭の揺れ、バランスをとれない、震え、麻痺、自傷行為、攻撃性、自咬、認知障害など多岐に及びます。

PDD(Proventricular Dilatation Disease/腺胃拡張症)と対処

トリボルナウイルスの発見の要因となった鳥ボルナ病を代表する症状。

但し、必ずしもPDDを発症するわけではありません。

また、必ずしも「PDD=鳥ボルナ病」ではありません。

腺胃拡張の診断はレントゲンで行います。

鳥は腺胃で消化酵素や酸性分泌液を分泌し、筋胃で磨り潰します。

腺胃の動きを司る神経がトリボルナウイルスによるダメージで機能不全となり、消化吸収が出来なくなります。
・沈鬱
・痙攣、ふらつき
・痩せ
・あくび
・吐き
・便が小さくなる
・下痢
・未消化便
・ほか

食物が詰まった状態で腫れて破裂する可能性もあります。

PDD対処療法としての食事は、消化しやすく高エネルギーの餌が効果的。

種子、ナッツ、リンゴなど果物の皮は消化が難しいため避ける必要があります。

ラウディブッシュのPDD処方用ペレットも有効です。

薄いフォーミュラも有効です。

初期段階であれば、繊維質の高い野菜が有益である可能性も示唆されています。

楽しみのない餌がストレスとなって進行を加速させる懸念もあります。


毛引きや自咬

2012年に毛引きのオオハナインコからトリボルナウイルスが検出されました。

毛引きと自傷行為は末梢神経炎に関連しています。

毛引き鳥の54.4%と神経疾患の鳥の68.4%が鳥類ボルナウイルスの検査で陽性だったという研究結果があり、相関関係が確立されているとされています。

ドイツの民間獣医診療所での126羽の鳥の研究では、他の神経学的兆候のない毛引き鳥で2番目に高いとー

消化管の二次的な細菌および真菌感染症

迷走神経は「炎症性反射、消化管病原体の侵入および組織損傷時の免疫応答および炎症を制御する神経反射」も制御します。

この反射が損なわれると、細菌の異常増殖に対する自然な抵抗が起こります。

これは腸内微生物叢(腸内フローラ)の変化と、ウェルシュ菌や真菌生物などの病原性生物の異常増殖につながります。

消化管通過の遅延によりウェルシュ菌と腸炎を発症します。

心筋炎,急性死

消化管や神経系だけでなく、体内のさまざまな組織を攻撃します。

肝臓、腎臓、副腎、心臓、肺でも発見されています。

心臓の右側には高密度の神経組織があり、一見正常に見える鳥の急性死をもたらすことがよくあります。

心臓は迷走神経によって神経支配され制御されており、影響を受けた鳥では右心室が拡大しています。

不整脈と血圧および心拍数の変化がみられます。

視力障害

目と脳の間の神経が感染し、視力低下や失明につながります。

検査方法

トリボルナウイルスの確実な生前検査は困難。

血液、後鼻孔と総排泄腔のスワプ検査が有効とされますが、一般的には「糞」による検査です。

ウイルスが糞に排出される頻度は、間欠的である場合が多く、最低でも数日分まとめた糞での検査が必要となります。

糞のごく一部を検査するため、糞の量が多くなるほど、疑陰性となる可能性は大いにあります。

確率を上げるには数日分まとめた糞からの検査を数回することが必要です。

販売店でボルナウイルス検査が陰性となっている場合でも、参考程度に再度の検査が望まれます。

血液検査よりも糞便検査が有効。

もともと無症状であったものが通院や血液検査などで過度にストレスがかかって発症ということは無くはない。PDDの検査についてはレントゲン。

鳥ボルナ病の治療

効果的な治療法は模索中であり、研究のブレイクスルーを期待します。

トリボルナウイルスを自分の免疫で排除/排出することは出来ない(自己免疫反応が関与している可能性があることの示唆?)

SLClubb,M.Meyerの説では、陽性の鳥は病気に対して自然な免疫を持っている可能性があるとしています。
陰転した例はある(計測限界値以下)

鳥ボルナ病の治療薬

現在使用されている薬物療法は模索段階と言えますが、幾つか使用例はあります。
・ファララビル/アビガン:抗がん剤
・アマンタジン
・インターフェロン
・セレブレックス:抗炎症薬
・セレコキシブ:抗炎症薬
・メロキシカム:非ステロイド性抗炎症薬
・リバビリン
・シクロスポリン:免疫抑制剤

ファララビル/アビガン

ボルナ病ウイルス1型(BoDV-1)を計測限界以下に低下。
ファビピラビル(T-705)の効果を再び試験し、比較的高用量ではあるが、哺乳類と鳥類の両方のボルナウイルスを減少させることを観察した。

セレブレックスとメロキシカム

セレブレックス(10mg / kgを1日1回経口投与を6〜12週間)では首尾よく治療された。 Dahlhausen etal 2002
苦しんでいる鳥には毎日20 mg / kgの経口投与量を使用することを推奨していますが、一部の鳥の胃腸出血の副作用とスミレコンゴウインコで薬剤に対する過敏症の発症をもたらしたことを報告。腎疾患のある鳥にはNG。不明な点も多い。
しかし、抗炎症薬の使用は批判されており、セレブレックスとメロキシカムを使用することの有効性はあるとしても限られているとも指摘があります。
胃腸の炎症および出血という深刻な副作用の可能性。
また、オカメインコのメロキシカムによる治療では、症状を悪化させたことが報告されています
PDD症例でのNSAID(セレブレックスとメロキシカム)の使用は直ちに中止されるべきであるという指摘もあります。
抗炎症薬の使用はまだ議論中。

シクロスポリン

臓器移植で拒絶反応を防ぐためにヒトで使用される免疫抑制剤のシクロスポリンの使用は、体内に大量のウイルスが残っているにもかかわらず、オカメインコの臨床症状の軽減をもたらしました。

リバビリン

広範囲のRNAウイルスにわたるRNA複製を減少させる薬剤であるリバビリンの効果を調査し、哺乳類細胞と鳥類細胞の両方で培養細胞に対してウイルス複製を減少させたが、ウイルス排除はしなかった。

インターフェロン

免疫系の調節を助けることが知られている1つのインターフェロン
培養細胞で効果的?

トリボルナウイルスの不活性化方法

・トリボルナウイルスは他のRNAウイルスよりは環境中で安定していますが、宿主の外で存在出来る限界時間は8時間とされています。(Dahlhausen)

・摂氏56度で急速に感染力が低下します。

・紫外線に弱く、漂白剤や一般的な消毒液でも効果的に無効化できるとあります。

紫外線に弱いものが屋外禽舎でそこまで蔓延するのか疑問を感じますが、現状多くの事項でDahlhausen博士による発表が通説になっています。

最後に

現状では何歳であっても例え検査済であってもホルダーである可能性はありえます。

有効な治療方法も確立は出来ていません。

現時点での一般的な対処法としては隔離か安楽死のみ。

特に多頭飼いの場合は発症するまでに何年も経っていれば隔離も「今更」が実際でしょう。

但し、簡単に空気感染するようなものではなく、一般的な消毒液や紫外線で不活性化は容易に可能です。

PDDが疑われる場合には、消化しやすい餌を心がけること。

消化酵素を餌に足すことも有効。

発症/活性化のトリガーはストレス、免疫力の低下が大きな要因。

まだまだ不明なことだらけなものの研究は盛んな分野。

参照(抜け有り)

https://www.hindawi.com/journals/vmi/2020/6563723/
https://www.researchgate.net/publication/316592708_Antiviral_activity_of_Favipiravir_T-705_against_mammalian_and_avian_bornaviruses
https://www.abc.net.au/news/2021-01-25/potential-covid-19-treatments-being-trialled-in-australia/13069392
改訂 ウイルス分類話題のウイルス分類
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/58/1/58_580104/_pdf
オルソボルナウイルスの膜糖蛋白質の発現調整による戦略的粒子産出機構とその応用|京都大学 酒井まどか
Avian Bornaviral Ganglioneuritis: Current
https://amccorona.com/wp-content/uploads/2018/03/Understanding-Avian-Bornaviral-Ganglioneuritis-PDD.pdf?_x_tr_sl=auto&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=nui
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23253163/
https://www.hindawi.com/journals/vmi/2020/6563723/
特集 Negative Strand RNA Virusのウイルス学
https://www.hindawi.com/journals/vmi/2020/6563723/
https://www.semanticscholar.org/paper/Retrospective-study-of-PDD-(Proventricular-Disease)-Clivill%C3%A9/774b1ead414fdd9daae69d29d6cd4060e61d8324
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28413724/
https://www.hindawi.com/journals/vmi/2020/6563723/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6065558/
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/03079457.2011.589825
https://www.embl.org/people/person/b3e1dc146cbce649c7e756cf2d8eab2d698f5468e716464259dbf062048b572d/https://vetmed.tamu.edu/news/press-releases/schubot-researchers-image-avian-borna-virus/
Avian Bornavirus and Proventricular Dilatation Disease: Facts, Questions, and Controversies
https://www.mdpi.com/1999-4915/11/12/1130