鳥類の孵化とは、卵の中で発生した胚が成長し、雛鳥として卵の外へ出てくることです。
英語表記はHatch / Hatching(ハッチ/ハッチング)。
卵から出るには内側から嘴で突いて殻を割る必要があります。
この作業を嘴打ち(はしうち)と呼びます。
英語表記はPip/Pipping(ピップ/ピッピング)。
しかし孵化前の嘴は柔らかく、殻を割る強度がありません。
そこで嘴の先端には卵歯/卵嘴(らんし)という嘴打ち専用のパーツが備わっています。
英語表記はEgg tooth(エッグ トゥース)。
卵歯は孵化後しばらくして自然に消失します。
孵化は命がけの試練であり、力尽きて命を落とすことは珍しくありません。
卵の中で亡くなることを死籠もり(死ごもり、死にごもり)と呼びます。
途中で成長が止まる場合を中止卵(ちゅうしらん)と呼びます。
なお、鳥類の孵化日とは哺乳類での誕生日に相当します。
よって鳥類の誕生日祝いはHappy BirthdayよりもHappy Hatchdayでしょう。
卵の中で成熟期を迎えると、殻を割って外に脱出しなければなりません。
この作業を嘴打ち(はしうち)、英語ではPip/Pipping(ピップ/ピッピング)と呼びます。
最初の嘴打ちは卵の殻を突くことではなく、気室を破ることから始まります。
ここで肺呼吸がはじまり、卵殻を割ると本格的に肺呼吸に切り替わります。
肺呼吸がはじまると鳴き声を出せるようになりますが、鳴くかどうかは個体差です。
嘴打ちは数時間から数日を掛けてコツコツと雛から見て左回りに卵歯で突いて殻を割っていきます。
気室の境目あたりに沿って割れ目を作っていくことが理想的です。
円を描くようにコツコツと割って繋がるのですが、円がズレてしまい螺旋状になる場合もあります。
親鳥が抱卵しているのであれば、嘴打ちを介助(卒啄同時)してくれます。
しかし介助の無い孵卵器だと、ここでエネルギーを使い果たして亡くなることもあります。
孵化前の嘴は柔らかく、強度や形状的に嘴打ちには適していません。
そこで嘴打ち専用の使い捨て工具が備わっています。
上嘴の先端上部をよく見ると鋭利で硬い角質の突起があります。
これが卵歯/卵嘴(らんし)、英語表記ではEgg Tooth(エッグ トゥース)です。
突出部(caruncle)と表現されることもあります。
孵化後には不要になるため、成長過程で自然に失われます。
なお、キウイなどは卵歯を備えておらず、キツツキなどは上下に2つの卵歯を備えているそうです。
孵化までの嘴打ち所要時間は一定ではありません。
12~36時間程度とも言われますが、あくまで目安です。
卵の殻の強度や雛のパワー、卵の場所や温湿度といった環境面でも左右されます。
親鳥に抱卵されているのであれば、嘴打ちを親が外側から手伝ってくれます。
しかし、孵卵器での人工孵化においては助けはありません。
もし自力での嘴打ち完了が困難な場合、殻割りの介助を必要とする場合があります。
見切りの時間を嘴打ち開始から36~40時間とも言われますが、これもあくまで目安です。
雛は孵化する前に下腹部に弁当を用意しており、しばらくは飲まず食わずで凌げます。
介助で助けるつもりが余計な手出しかつ致命的な事態を招くかもしれません。
但し、特に逆子であれば介助の必要性は高まります。
嘴打ちの介助は英語だとAssist Pipping
仏教には啐啄同時という禅語があります。
親子や師弟の関係を説くものですが、鳥の孵化を比喩した四文字熟語です。
嘴打ちに気付いた親鳥は、雛が卵から出やすいように手助けをします。
卵の中の雛は内側から卵をつつき、それに合わせて親鳥は卵の外側から殻を啄みます。
啐とは雛が卵の内側から鳴くこと、 啄とは親鳥が外側から啄むことです。
卵には上下があります。
一般的に販売されている鶏卵パックの見た目通りです。
鈍端部が上、鋭端部が下です。
上側の丸みのある鈍端部の最上層には空気を貯める気室があります。
下側の鋭端部には割れにくい強度があり、最下層には卵白があります。
嘴打ちを開始する時点で胎児の正位置は、頭部が上側にある状態です。
つまり気室側に頭部があります。
これが逆さになると文字通りに逆子です。
卵の上下は、上側は丸みのある鈍端部、下側は鋭端部です。
嘴打ち開始時に胎児の姿勢は、気室側に頭部のある状態が正位置です。
これが逆になると文字通りに逆子です。
逆子は孵化率が大きく下がるため、鶏や鶉といった家禽での研究は古くから行われています。
学術表記では、鋭端側に頭部のある逆子をmalposition II型、頭部が両脚の間にあるものがI型とされます。
拝見した畜産レポートでは、逆子の発生率は条件で大きく異なるようです。
死籠もりの過半数が逆子であるとされています。
卵の向きは発生率に大きく影響し、逆さに設置すると発生率は跳ね上がります。
但し鈍端を上に向ける正位と水平に置く場合での孵化率や逆子の発生率に差異は無いともあります。
また、理想的な条件を整えたとしても逆子は1~5%程度の発生率とされています。
同じ条件下において鶏よりも鶉の逆子発生率が高く、両種の孵化率の違いを裏付ける結果になっています。
卵の表面には1万を超える多数の気孔があり、酸素を取り込み二酸化炭素と水分を放出することが出来ます。
但し、肺呼吸は気室の膜に穴を開けてから始まります。
卵殻に穴が開くと完全に肺呼吸へ切り替わります。
気室で減圧するよう段階を経た工程でゆっくりと移行します。
肺呼吸がはじまると鳴き声を出せるようになります。
とはいえ、まったく鳴かずに孵化する個体もいます。
孵化したてのヒナは下腹部に大きな膨らみがあります。
目玉焼きの目玉である黄身/卵黄嚢(yolk sac)を腹腔内へ取り込んだ栄養源です。
我が家ではお弁当と呼んでおり、ここでも使わせて頂きます。
この持ち出しの弁当にはおよそ70時間程度の栄養源になると言われています。
環境や状態よってエネルギー消費は大きく変わるため、孵化後どれぐらい残っているかは一概には言えません。
嘴打ちに時間とエネルギーを多大に消費して枯渇すると、孵化直後であってもすぐに栄養が必要になります。
孵卵器で孵化させた場合、初日に挿餌は不要かつ3日目前後に壁があるのはこのためです。
卵黄嚢と下腹部は1本の血管(へその緒)で繋がっており、孵化直後であれば見れます。
通常は吸収後に乾燥し、孵化時に卵を蹴り出す過程で自然に切れます。
もし吸収前に早まった介助孵化をしてしまった場合は、下部の殻割りを中断して吸収を待つことで対処出来たことはあります。
また、この部分の疾患として、へその炎症(臍炎|さいえん)があります。
卵黄嚢感染の感染源は大腸菌が最多で、サルモネラ属、レンサ球菌属ほか色々。
発症すると赤色が強くなるようです。
また、卵黄嚢の残骸が体内に残ってしまう卵黄嚢遺残という疾患がありますが、インコやフィンチでは稀なようです。
漿尿膜(しょうにゅうまく)は、学術誌などではCAM|Chorioallantoic membrane)と表されます。
漿尿膜はガス交換および浸透圧を調節する器官で、
ウイルスやワクチンの研究で活躍する部位のため、ネットにもその類の情報が沢山垣間見れます。
嘴打ちが始まると空気が入り込み、漿尿膜が乾燥していきます。
時間を掛け過ぎると膜に身体がこびり付いてしまうリスクが発生します。
卵が孵化するまでの工程について、下記に素敵な動画を紹介します。
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