孵化とは卵の中で成長した個体が外へ出てくることです。
すなわち命がけで卵の中から脱出するという大きな試練です。
卵の中での成熟期を迎えた雛鳥は、卵の内側から嘴で突いて殻を割ろうとします。
コツコツと数時間から数日を掛けて割れ目を作っていきます。
この作業を嘴打ち(はしうち)と呼びます。
ここで力尽きて命を落とす雛も珍しくありません。
嘴打ちに至る前も含め、孵化する前に亡くなることを卵の死籠もりと呼びます。
孵化するために卵を内側から突くための専用工具、それが卵嘴(らんし)です。
卵の中の雛鳥の嘴は柔らかく、形状的にも嘴打ちを行うには適していません。
孵化したばかりの雛鳥を見るとよくわかるのですが、見慣れた嘴とは違う部分があります。
上嘴の先端上部に鋭利で硬い角質の突起が備わっているのです。
この突起が卵嘴と呼ばれる嘴打ち専用のアタッチメントです。
この卵嘴は孵化したあとには不要となるため、成長過程で自然に失われます。

仏教に啐啄同時という有名な禅語があります。
親子や師弟の関係を説くものですが、鳥の孵化を比喩した四文字熟語です。
嘴打ちに気付いた親鳥は、雛が卵から出てきやすいように手助けを行う場合があります。
卵の中の雛は内側から卵をつつき、それに合わせて親鳥は卵の外側から殻を啄みます。
啐とは雛が卵の内側から鳴くこと、 啄とは親鳥が外側から啄むことです。
孵卵器での人工孵化において、 嘴打ちを助ける場面にはこの熟語を思い浮かべつつ行います。
力尽きようとしている卵に対しては、ちょっとしたアシストではなく全面的に殻割りをしますが、 啐が無いときには非常に非常に気持が揺さぶられます…
そのまま亡くなる場合の無力感、助けられたときの幸福感の差は対極です。
特に孵卵器での人工孵化において、孵化予定日あたりになると嘴打ちの経過が非常に気になります。
嘴打ちを行いやすいように湿度をあげたり、転卵を止めたり、角度を固定したり、何をやろうともここで力尽きてしまう雛も珍しくはありません。
嘴打ちが単純に下手なのであれば、軽くアシストしてやる啐啄同時で難なく孵化します。
力尽きようとしている卵に対しては、アシストではなく全面的に殻割りをしますが、 啐が無いときには非常に非常に気持が揺さぶられます…
助けられたときは幸福感に満ちますが、そのまま亡くなる場合の絶望感は対極です。
嘴打ちは、早い雛であれば数時間で出てきますが、遅い雛であれば数日掛かります。
概ね半日程度が快調といったところでしょうか。
一節には36時間程度までは様子をみるような記述もありましたが、ソースは不明です。
経験上では丸1日で進展が見られないのであれば要注意だとは思います。
但し、力尽きるまでの時間は個の力で違うため、踏ん切りも難しく、早計で殻割りしてしまって取り返しのつかない事態を招くことも有りえます。
卵の内部で逆子になっている場合もあります。
卵の尖っている鋭端部は強度があり、パックで売られている鶏卵なども鋭端部を底にしてパックしています。
卵の丸い鈍端部には空気のたまる気室があります。
こちらを下に向けると空気が鈍端部にいってしまいます。
気室のある鈍端部に頭部がある状態で孵化することが正常であり、逆になるといわゆる逆子です。
逆子の場合、嘴打ちが難しくなります。
その場合はアシストではなく全面的な殻割りを選ぶべきだとは思いますが、
卵の内部から気室の境目あたりに沿って嘴打ちします。
うまく一周が繋がらなければ螺旋を描いて無駄な体力を使ってしまいます。
肺呼吸に切り替わる前に殻割りをしてしまうと
卵膜と血管
孵化する直前の過程で、雛は下腹部あたりに卵の黄身、黄卵を取り込みます。
この工程に1日程度掛けます。
我が家では俗称で弁当タンクと呼んでいます。
正式名称があると思いますが、ひとまず調べるのはあとにして筆を進めます。
この弁当タンクには1日程度の栄養が詰まっており、このお陰で孵化直後には挿餌をする必要がありません。
黄卵と下腹部は1本のへその緒のような血管で繋がっており、孵化直後にも繋がっている事は珍しく有りません。
ただ、嘴打ちの過程でこの弁当タンクを使い切ってしまう場合もあります。
卵の内部で逆子になってしまっている場合は、弁当を作ること厳しく、
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