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もくじ
大きな瞳とそれをさらに強調するアイリング、短い尾羽根でずんぐりむっくりな愛らしいシルエット、下尾筒には特徴となる鮮やかな赤い羽色を備えたアケボノインコ属に分類されるインコたち。
学名ではPionus(ピオヌス)、英名だとPionus(パイオナス)と呼ばれます。
飼鳥として流通するアケボノインコ、スミレインコ、ドウバネインコ、メキシコシロガシラインコ、アケボノインコモドキの5種、その他に亜種を含めて約20種で構成されます。
属としての分布域は広大で北中南米に跨ります。
種としての分布北限はメキシコ北東部にメキシコシロガシラインコ、南限はアルゼンチン北東部にアケボノインコモドキの亜種が分布します。
ここではアケボノインコ属の総合的な記事としており、それぞれの種については別記事を用意します。
種ごとの別記事(旧ブログから移行作業中)
アケボノインコ属の最小級はメキシコシロガシラインコの約24cm、最大級はシロガシラインコの約30cm。
大雑把な平均サイズ感は概ね体長28cm前後、体重220g前後で、極端な差はありません。
ぽってりしたシルエットに普段の比較的ゆったりした所作も合わさってとても愛らしい雰囲気があります。
オスとメスで外見上にわかりやすい性差はありません。
羽色のベースカラーはスミレインコとドウバネインコを除けば緑色で、全種共通して下尾筒(undertail-coverts)に赤い羽根を備えます。
野生下では小さな群れや時には大きな群れで行動し、ねぐらでは群れ同士が合流して非常に騒がしく過ごします
鳴き声は普段は小さく可愛らしいものですが、絶叫時には非常に大きく響き渡ります。
渡り鳥ではありませんが、季節によって生活拠点を移動する漂鳥です。
羽ばたきはボウシインコ属よりも速くて深いストロークで、飛行パターンに特徴があります。
独特な香り、首振り喘ぎ鳴といった特徴もあります。
論文といえるような資料も無いためアケボノインコ属すべてに共通する特徴とするのは推測ですが、少なくとも自分で嗅いだことのある4種アケボノインコ属のインコたちには香りの特徴があります。
我が家ではマヌカハニーのような香りと表現しておりますが、ルリコンゴウインコのような甘い香りではなく、麝香のような独特さです。
香りは常に漂うわけではなく、興奮すると鼻腔のあたりから放出しているように感じます。
これについても裏付けとなる論文なりに辿り着けていませんが、アケボノインコ属に尾脂腺はありません。
或いは極端に退化しているのか、進化しなかったのかもしれません。
これはボウシインコ属にも共通することであり、系統分類でボウシインコ属の下層に位置するアケボノインコ属であれば共通する特徴なのかもしれません。
系統分類的に共通するのであれば、ヒオウギインコ属も同様かもしれません。
アケボノインコ属は8~9種とその亜種で構成されます。
8~9というのはアケボノインコ属(Pionus)の分類構成は機関によって差違があるためです。
ここでは基本的にIOC(国際鳥類学会議)の分類を則っていますが、アケボノインコ属についてはIUCN(国際自然保護連合)やBLI(BirdLife International)の分類を採択しています。
近年は保全の観点から絶滅危惧に直面する亜種を種へ昇格するよう再編が急がれており、IOCよりIUCN/BLIの方が早い対応になっています。
IOCにおけるアケボノインコ属の分類構成は2021年Ver.11においては8基亜種+10亜種ですが、ここでは9基亜種+11亜種としています。
相違は2点
- ブラジル東部に分布するアオアケボノインコをIUCNでは種(Pionus reichenowi)とし、IOCでは亜種(P. m. reichenowi)にしていること
- ドウバネインコの小型亜種コドウバネインコ(Pionus chalcopterus cyanescens)をIOCでは認定していないこと
なお、サンゴバシインコCoral-billed Parrotについてはヨゴレインコの亜種(Pionus sordidus corallinus)です。
以下ここではアケボノインコ属を9種11亜種構成で扱います。
- Pionus fuscus
Dusky parrot
スミレインコ - Pionus sordidus
P. s. saturatus
P. s. ponsi
P. s. sordidus
P. s. antelius
P. s. corallinus
P. s. mindoensis
Red-billed Parrot
ヨゴレインコ - Pionus maximiliani
P. m. maximiliani
P. m. siy
P. m. lacerus
P. m. melanoblepharus
Scaly-headed Parrot
アケボノインコモドキ - Pionus tumultuosus
Plum-crowned Parrot
バラガシラインコ - Pionus seniloides
White-capped Parrot
シロガシラインコ - Pionus menstruus
P. m. rubrigularis
P. m. menstruus
Blue-headed Parrot
アケボノインコ - Pionus reichenowi
Blue-breasted Parrot
アオアケボノインコ - Pionus senilis
P. s. decoloratus
White-crowned Parrot
メキシコシロガシラインコ - Pionus chalcopterus
P. c. chalcopterus
P. c. cyanescens
Bronze-winged Parrot
ドウバネインコ
属としての分布域は広大で、北中南米に跨ります。
最北部は北アメリカ大陸最南部のメキシコで、メキシコシロガシラインコがメキシコから中米コスタリカあたりにかけて分布します。
最南部は南アメリカ大陸のアルゼンチン北西部で、アケボノインコモドキの亜種(P. m. lacerus)が分布します。
とても大雑把に国をベースで表すと下記のような分布域です。
いずれ種ごとの色分けを含めて作り直します。
Proceedings of theRoyal Society of London B 274:2399-2408
要
世界共通の名称である学名ではアケボノインコ属を「 pionus 」と表記します。
このPionusの語源はギリシャ語で「太った」「肥えた」といった意味合いの「piōn (pionos)」。
それが「Pionias」となり「Pionus」へと変化したものです。
ぽっちゃり体型の寸詰まった可愛らしいシルエットを比喩した命名由来です。
デブというよりは「ぽってり」「ずんぐりむっくり」といった可愛らしいニュアンスだと解釈しています。
Pionusの発音を巡っては「ピオヌス」or「パイオナス」で意見が割れる場面をよく見ます。
そもそも日本語のカタカナ表記に当て嵌める事自体に正解があるのかどうかは置いておいて、、、
これは学名と英名の表記がどちらも「Pionus」であることが起因でしょう。
スペルが同じPionusであってもラテン語と英語では発音が違うためです。
また、学名と英名が同じ表記なのは珍しいことです。
学名は英語ではなくラテン語です。
ラテン語はローマ字読みで発音するのが一般的です。
よってPionusは「ピオヌス」と発音します。
例:スミレインコ Pionus fuscus → ピオヌス フスクス
英語ではPionusを「パイオナス 」と発音します。
例:スミレインコ Dusky Pionus → ダスキー パイオナス
※現在の標準英名はPionusをParrotに置き換えたため Dusky Parrot が標準英名です。
学名準拠であれば「ピオヌス」、英語準拠であれば「パイオナス」と発音するのが一応の正解になるのではないでしょうか。
そのため、学名と英名を混ぜた発音は間違いになるとは思います。
誤り例:Dusky Pionus → ダスキー ピオヌス
私のポンコツなヒアリングという大前提で、国際学会の場で各国のスピーカーの発音の印象として、ヨーロッパや南米のスピーカーは「ピオヌス」、北アメリカのスピーカーは「パイオナス」と発音されている事が多いように感じます。
南米に分布するズグロシロハラインコやシロハラインコで構成されるシロハラインコ属。
シロハラインコ属の学名は「pionites」と表記します。
これは「Pionusに似た」という意味合いで、アケボノインコのような体型であることが由来です。
このニ属は野生下で重複する分布域があります。同じ枝にとまる可能性もあるかもしれませんね。
アケボノインコ属に限らず、種の多様化は永続的な生息地の分断が大きな要因です。
近年の分子生物学的研究(mtDNAやSpindlin)による遺伝子分析において、系統樹の相関関係は解明できないとも言われるそうですが、ここでは系統樹を元にした話。
オックスフォードアカデミックによる新世界産インコのDNA配列発表やアマゾン国立研究所(Instituto Nacional de Pesquisas da Amazônia)のCamila Cherem Ribas博士らによるアケボノインコ属の系統分類の研究論文によると
アケボノインコ属はボウシインコ属、ワキアカボウシインコ属、ヨツボシミドリインコ属と密接な関係のあるアマゾン主流クレードです。
そしてアケボノインコ属はまず2つに分岐されるのですが、これをAグループとBグループにすると下記のようになります。
- アケボノインコ/アオアケボノインコ
- ドウバネインコ
- メキシコシロガシラインコ
- バラガシラインコ
- シロガシラインコ
- アケボノインコモドキ
- ヨゴレインコ
- スミレインコ
ハイブリッドと表記すると響きは良いですが、異種間交配の雑種です。
アケボノインコ属内でのハイブリッドは、先程のグループが同一であるほど成功率への影響はあるかもしれませんが、グループAとBでのハイブリッドも存在しています。
- アケボノインコ x アケボノモドキインコ
- アケボノインコ x メキシコシロガシラインコ
- アケボノインコモドキ x メキシコシロガシラインコ
- スミレインコ x メキシコシロガシラ
他にも存在しそうですが、ひとまずネットで写真を確認したものは上記の通り。
また、異属種交配としてはボウシインコ属とのハイブリッドが存在するようです。
ロロパークの所在するテネリフェ島で、♀のアケボノインコモドキと♂のキソデボウシインコの篭脱け個体同士での交雑が観測されています。
- アケボノインコモドキ♀ ✕ キソデボウシインコ♂
このペアは2013年から2019年に掛けて5年連続で雛を残しています。
ボウシインコ属の系統はアケボノインコ属の上層に位置しているため、比較的近しい異属ではあります。
またスペイン南部のセビリアでもキソデボウシインコ♂とワカケホンセイインコやオキナインコとの異属種間ペアが確認されていますが、それらには流石に子孫はありません。
このあたりについてDailosHernández-Brito博士が研究を公開されていますので、いずれ掘り下げたいと思います。
アケボノインコ属に分類される種で色変わりの品種確立は現在のところありません。
但し、突然変異としてのルチノーは存在します。
- アケボノインコ
- メキシコシロガシラインコ
- スミレインコ
まさにルチノーらしい羽色発現のアケボノインコとメキシコシロガシラインコ。
それに対して、スミレインコのルチノーらしくない羽色発現の対比も興味深いところです。
あくまで自分の経験に基づく主観です。
アケボノインコ属は静かで大人しく、集合住宅にも向いているといった触れ込みをよく見かけます。
もちろん静かな個体はいますし、特に1羽飼いで呼び鳴きも無いならとても静かでしょう。
但し、私の知る限りアケボノインコやスミレインコはとても煩い絶叫鳴きをします。
大きな声量だけではなく、声質も耳障りです。
我が家で測定した絶叫時の声量最大値は約115デシベルで、125デシベルを超えるコンゴウインコやオオホンセイインコより低いながらもずっと耳障りです。
基本的に静かな個体であっても発情期に豹変するケースもあります。
我が家では複数羽での合唱団なので相乗効果も大きいのですが、耳元でのコンサートは猛烈です。
シロハラインコやオキナインコあたりと同じく、野生鳴きを知る者がいると一発で覚えます。
ただ、特に大人しいとされるメキシコシロガシラインコは我が家でも相当静かで不安になるほどでした。
いずれにしても、鳴き声はお店では中々確認出来ないことであり、迎えてからの対処になります。
アケボノインコ属を迎えるのであれば、静かならラッキーぐらいの腹積もりは必要だとは思います。
ポテンシャルとして、喧騒なジャングルで呼び合うための絶叫鳴きの質が細くて小さいわけがありません。
我が家での例とすれば、オスは音真似や数ワードの単語程度であればハッキリ喋り、メスは片言を喋る個体もいれば、一切喋らない個体もいます。
ポテンシャルは高い方ではないと感じますが、お喋りに関しては飼い主の接し方と相性によって、喋らないとされている種でもとんもでなく喋るようになる個体もいます。
私にとって最大の衝撃は2~30年ぐらい前だったか、お婆さんと二人暮らしでずっと語りかけていたら下手なセキセイインコよりもペラペラと人語を喋るようになった雀。
保護されたどこにでもいる野生の普通の雀。
フィンチは舌の構造的に喋れないとかなんとかの常識を完全に打ち壊すものでした。
それを思えば、すべてのインコはベラベラ喋るポテンシャルを秘めているのかもしれません。
好奇心はそれなりに高くて大人しいとは思えませんが、相手が攻撃的でなければ自分から攻めることは稀なように感じます。
同属同種間での小競り合いや本気の喧嘩も見られますが、コニュアやカイクーほどではありません。
発情期のテリトリーは別にして、忍耐強い方だと感じます。
ただ、このあたりは環境にも大きく左右されるとは思います。
脂粉に関してはーーーーーーーー
アスペルギルスをはじめ、呼吸器疾患の多いとされるアケボノインコ属。
鼻腔の結露による鼻提灯も見られるような種で、寒暖差に弱い印象は強くあります。
成鳥であれば丈夫な部類だとも思いますが、環境変化には弱い印象もあります。
ワイルド大量輸入時には落鳥していたりパニック衝突であろう嘴や鼻欠け個体も多く、安定せずに落ちる個体も多いことから心身的にストレス耐性は弱いという印象も強くあります。
アメリカではアケボノインコ属のうちの5種は一般種です。
現在の日本において一般流通する種は大部分をアケボノインコが占めています。
メキシコシロガシラインコ、アケボノインコモドキ、ドウバネインコ、スミレインコの流通は稀にありますが、随分と見る機会は減りました。
南米ワイルド便はいまでも存在しますが、かつてのような規模や頻度ではありません。
現
- アケ
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