改訂は追々…
少々独特な行動様式をもち、飼鳥としても一風変わった魅力をもつ小型インコ、サザナミインコ。
サザナミインコ属 Bolborhynchus に分類されるオウム目ヨウム科の一種です。
北米南部から中米や南米に広く分布し、生息環境も一定ではありません。
標高3,000m級の高地から600m程度の低地、亜熱帯林、雲霧林、竹林(チュスケア)などで確認されています。
アンデス山脈の南北で分布域を地域的隔離された2亜種が分類されます。
北中米側の基亜種サザナミインコ Bolborhynchus lineola lineola
南米側の亜種トラフインコ Bolborhynchus lineola tigrinus
但し飼鳥界において亜種の区別はされておらず、一括にサザナミインコです。
もし各亜種の流通があったとしても、亜種間交雑が浸透していると推測されます。
また、亜種B.l.tigrinus(チグリヌス)トラフインコは最初期1967年にはメリダサザナミと名付けられていました。
当時はペルー分布を別亜種ペルーサザナミBolborhynchus lineola maculatusとされていました。
欧米の飼鳥界ではリニーの愛称で親しまれています。
人為的な色品種改良も盛んで、青の登場で人気に火が付いたとされています。
分類 | Bolborhynchus サザナミインコ属 |
学名 | Bolborhynchus lineola |
🇯🇵和名 | B. l. l サザナミインコ/小波鸚哥 /漣鸚哥 B. l. t トラフインコ /虎斑鸚哥 、メリダサザナミ |
🇬🇧英名 | Barred parakeet(標準英名) Lineolated parakeet Catherine parakeet Linnie (愛称:リニー) |
🇵🇹ポルトガル | Periquito-catarina |
🇨🇷コスタリカ | Perico Listado |
🇭🇳ホンジュラス | Perico Rayado |
🇲🇽メキシコ | perico barrado |
🇩🇪ドイツ | Katharinasittich |
🇪🇸スペイン | Catita Barrada |
🇳🇱オランダ | Katharinaparkiet |
🇨🇿チェコ | papoušíček pruhovaný |
🇫🇷フランス | Toui catherine |
🇮🇹イタリア | Parrocchetto barrato |
🇰🇷韓国 | 사자나미 |
🇨🇳中国 | 橫斑鸚哥 |
亜種 | 2 Bolborhynchus lineola Bolborhynchus lineola lineola メキシコ南部~パナマ西部までの北中米 Bolborhynchus lineola tigrinus ベネズエラ、コロンビアからペルー 統廃合:Bolborhynchus lineola maculatus ペルー東部 ペルーサザナミ |
分布 | 北中南米 |
分布国 | 基亜種|メキシコ、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマ 亜種|コロンビア、ベネズエラ、ペルー、ボリビア |
生息地 | 北中米:海抜 600~2,400m 南米(ペルー):1,600~3,300m 雲霧林地帯にある湿った常緑混交林 イネ科の常緑竹林(Chusquea) トラフインコは山崩れによってうまれた斜面に群生する森林地帯にも生息。 |
性的二型 | 安易に見て取れる特徴的な性差はありません。 傾向として、♂は全体的に濃く、尾羽根の中央部の羽には黒濃い模様がある。 ♀は羽模様が明るく、野生下では頭部に青い蛍光色が混ざることがある。 |
サイズ | 16cm 40-52g 野生調査 |
クラッチ | 3-7 |
抱卵 | 21-26 |
足輪 | 4.5-5.5mm |
CITES | Appendix II |
RED List | Least Concern 2004-2022- |
サザナミインコが鳥類史に登場したのは19世紀の1853年。
和暦では嘉永6年、日本にとっては大きな分岐点となった年です。
この1853年にペリー提督によるアメリカ艦隊が来航。
翌1854年には大阪天保山沖にプチャーチン提督によるロシア軍艦ディアナ号が来航、なにわの黒船騒動。
日本各地で連発した安政の大地震や京都大火など大災害も多発し、嘉永から安政に改元されました。
この黒船来航から1867年の大政奉還までの14年間が幕末です。
1853年の江戸幕府は第12代将軍の徳川家慶から第13代将軍の徳川家定に代わった年。
徳川家定の最初の正室は鷹司任子(よしながふみの大奥では鷹司任親)。
私の所有する最も古い鳥書籍(1917年発行の「飼ひ鳥」)の著者、小鳥公爵こと鷹司信輔の家系です。
歴史的人物としては、あの北里柴三郎が生誕しました。
世界的にはオスマン帝国がロシアに宣戦布告したクリミア戦争、の最中で、ディアナ号の行動も繋がっています。
2,000万人以上の死者を出したという清の太平天国の乱もこの頃で、19世紀も世界情勢は欧米絡みの戦争だらけです。
サザナミインコは1853年にアメリカの鳥類学者ジョン・カシン(John Cassin)によって登録されました。
ラテン語で「縞模様の小さなオウム」を意味するPsittacula lineolaと名付けられました。
カシンは世界をリードした鳥類分類学者の一人です。
その背景には富裕後援者のトーマス・ベラービー・ウィルソン(Thomas Bellerby Wilson)が購入した25,000羽を超えるアメリカ最大の鳥コレクションがあります。
カシンによるオウム目の現行分類は4種、サザナミインコ、メキシコアカボウシインコ、キエリヒメコンゴウインコ、ズアカウチワインコ。
カシンは55歳という若さで亡くなってしまいます。
その要因は鳥類標本に使用される防腐剤としてのヒ素によるヒ素中毒だと考えられています。
トラフインコの登場はサザナミインコから3年後の1856年。
フランスの鳥類学者シャルル・ド・スアンセ(Charles de Souancé)による登録です。
オウム目の分類でスアンセ博士の名前は数多く目にします。
ホオミドリウロコインコやメキシコシロガシラにキミミインコなどが個人的に印象深いところです。
スアンセ自身による名付けではありませんが、彼に因んで命名をされたSouancé’s Conuresもいます。
Souancé’s Conuresはオグロウロコインコ(Pyrrhura melanura / Maroon-tailed Parakeet)の亜種です。
学名:Pyrrhura melanura souancei
英名:Souancé’s Conures / Souancé’s Red-tailed Conures
和名:アカバオグロウロコインコ
コロンビアのからエクアドルに分布する亜種で、同郷フランスで有名なヴェロー博士(Jules Pierre Verreaux)が彼を称えた名付けです。
学名には人物名を付けられた献名も少なくないのですが、名称から特徴が伝わらないので部外者視点としては勘弁してほしいものです…
1882年 ドイツ|ハンブルク
1902年 ドイツ|ハンブルク
1913年 イギリス
1953年 イギリス
1962年 日本にサザナミインコ基亜種の活鳥が入った記録があります。
1975~2016年の国際取引数は45,270羽とされています。
サザナミインコが分類されるサザナミインコ属Bolborhynchus には、3種+1亜種が分類されます。
Bolborhynchus lineola | サザナミインコ | |
B. l. lineola | サザナミインコ | |
B. l. tigrinus | トラフインコ | |
Bolborhynchus ferrugineifrons | チャビタイインコ | |
Bolborhynchus orbygnesius | クネンボインコ |
チャビタイインコやクネンボインコを日本で見れる機会はまず無いでしょう。
これらの容姿は同属よりも近似属のシトロンインコを彷彿させます。
以前の分類ではユウギリインコとシトロンインコはサザナミインコ属でしたので、チャビタイインコとクネンボインコの分類がそちらに移行したとしても驚きはありません。
なお、シトロンインコをユウギリインコの語呂に合わせた俗称のアサギリインコとしての解説を目にすることもありますが、標準和名はシトロンインコです。
サザナミインコはアンデス山脈で南北に地理的隔離となり、長い年月を経てDNAレベルでの違いを生じました。
メキシコからパナマまでのアンデス山脈以北の北中米に分布する基亜種のサザナミインコ。
アンデス山脈以南の南米に分布する亜種のトラフインコ。
亜種の学名に付けられた「tigrinus」の由来はラテン語の「tigrinus」です。
「tiger stripe/虎の斑模様」といった意味合いです。
虎の斑模様とは、すなわち「虎斑(トラフ)」。
虎斑を日本国語大辞典で引くと「虎の毛皮のように、黄褐色の地に黒色の斑紋があるもの。とらふ。」とあります。
古くはサザナミインコを「トラフインコ」と呼ぶこともあります。
トラフインコは基亜種よりもベースカラーが濃い緑色です。
黒い縁取り模様や下尾筒の黒模様も強く現れるとされています。
もはやペットバードとして流通しているものはボタンインコと同じく亜種間の血が混ざりに混ざっている可能性が濃厚だと考えていますが、純血種で比べてみたいものです。
上記の写真はワイルドに近い南米輸入便なので、これはもしかして、、、と思わなくはありません。
サザナミインコ属の学名は「Bolborhynchus/ボルボリンチェス」。
Bolborhynchusとは、ギリシャ語の「βολβος / bolbos」と「ῥυγχος / rhunkhos」が由来です。
Bolbos:球根
Rhunkhos:クチバシ
という意味です。
球根は球の根ですが、球のBallの語源はBulbだそうです。
Bolborhynchusの解釈としては「球にクチバシがついたような容姿」とか「球のようなクチバシ」といった意味合いでしょうか。
属名ですからサザナミインコだけを指すわけではありませんが、他の同属はどちらかといえばシュッとした容姿なので、サザナミインコを基準に名付けられた属名なのかもしれません。
学名はリンネ式二名法という「属名+種小名」で表されます。
サザナミインコの学名Bolborhynchus lineola(ボルボリンチェス・リネオラ)であれば
属名「Bolborhynchus 」+種小名「lineola」です。
この「lineola」はラテン語で、線や縞といった意味です。
もしかすると命名時の基準はトラフインコだったのかもしれませんね。
標準和名サザナミインコの漢字表記は「小波鸚哥」です。
現代の漢字表記では「小波」「細波」「漣」の3種があり、そのどれもが同じ意味とあります。
意味は「水面に出来る小さな波」や「細かに立つ波」のこと。
国語辞典では、その意味をベースに感情表現として「心が揺れること」といった比喩的な表現に用いられたりするほか
現代でいうところの滋賀県大津市あたりにあった琵琶湖周辺の古地名「近江国」をさしたり
万葉集に「左散難彌(さざなみ)」、古事記に「「佐佐那美路(さざなみぢ)」として記述が登場します。
野生下における行動調査は数少なく、分布域も広範囲であることから資料は多くありません。
移動時以外での発見は特に難しく、1日の多くをあまり移動することなく樹冠でひっそりと小さな群れで過ごすとされています。
以前Parrot conventionでの講演を拝見したTohmas Arndt先生のEnzyklopädie der Papageien und Sitticheによると、
中米からボリビアの雲霧林と亜熱帯サバンナに分布する個体群は
暖かい季節には標高2,500mで観測され、涼しい季節は低地に移動する
木の芽や果実、昆虫や幼虫
夕方には塒の木に集い、樹冠で過ごすそうです。
エクアドルでは雲霧林だけでなく広い平原や川沿いにも生息するとあります。
チュスケア(Chusquea)と呼ばれる北中米から南米の山岳地帯に自生するイネ科の竹林にも見られます。
メキシコ南部から中米を経由してペルーやコロンビアまで北中南米に跨った広い分布域をもちます。
アンデス山脈によって分布域を南北に分断されており、両者は地域的隔離によって北中米側を基亜種サザナミインコ、北中米側を基亜種のサザナミインコB.l.lineola に分布がわかれます。
分布国は10ヶ国
基亜種:メキシコ、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマ
亜種:コロンビア、ベネズエラ、ペルー、ボリビア
海を越える渡り鳥ほどではないながら、季節によってそれなりの距離を移動する鳥を漂鳥(ひょうちょう)と呼びます。
サザナミインコは繁殖期の終わる冬に高地から低地に移動すると考えられています。
群れは20~150羽程度とされています。
但し、野生下での生態については不明な点が多く、鳥類学者Joseph Forshaw、Tony Juniper&Mike Parrのレポート以外に詳細な現地調査記録は見当たりません。(2018.2現在)
これは野生下でのサザナミインコを観察するには生息地が非常に困難な場所であり、しかも広大だからとあります。
野生下での生息数は5~50万羽と考えられおり、これもかなりざっくりですが、国際自然保護連合IUCNでの絶滅危惧懸念は最低水準のLCです。
サザナミインコは高湿度帯の中でも特に湿気の多い場所で暮らしているとされます。
そのため食性は柔らかい果実などを好み、穀物類など硬度のある食物は分解消化が苦手系。
飼い鳥としての経験上でもそれらは頷けるものです。
野生下においてはシード類もよく食べているようですが、好んで選択しているのか、消去法でそうなるのかは不明。
記録のある食物として、顕花植物のヘリオカルパス,ミコニア,セクロピア,竹科の種、耕作地でトウモロコシなど
野生下では地面での採食があります。
サザナミインコの主だった生息地帯は、山地の熱帯雨林、熱帯雲霧林、熱帯乾燥林。
熱帯乾燥林は背の低い木々や藪の広がる平原地帯でアフリカのサバナと似た気候です。
熱帯雲霧林は非常に湿度が高いにも関わらず体感湿度は低いとあります。
あまり共感出来ませんが、とにかく霧や霧雨が多い場所です。
そして霧が晴れて太陽が入ると一気に暑くなります。
サザナミインコの分布域は非常に広く、場所によっての標高に大きな差があります。
・メキシコ 1500m以下
・ホンジュラス 600m未満
・パナマ 1500m以上
・ベネズエラ 1600-2600m
・コロンビア 2900m
コスタリカについては是非コスタリカに移住してガイドをされている露木さんの記事を御覧ください。
Pura vida!|コスタリカ大自然コラム/リコーイメージング株式会社
露木さんとは2005年頃から当時お互いに熱心だったYahoo!Blog繋がりで懇意にして頂きました。
ピンポイントで具体的な生息場所ではなく、周辺の景色として見繕ってみます。
もし中米で観測するとすればコスタリカが最も現実的でしょう。
コスタリカについては是非コスタリカに移住してガイドをされている露木さんの記事を御覧ください。
Pura vida!|コスタリカ大自然コラム/リコーイメージング株式会社
露木さんとは2005年頃から当時お互いに熱心だったYahoo!Blog繋がりで懇意にして頂きました。
観測された標高の幅も非常に広く、800~3,300mとされています。
あくまで最低値と最高値であって、皆がその高低差を移動するわけではないでしょうが、通常でも1,200~2,500m程度の移動は行われているようです。
単純に標高3,300mといえば富士山の8合目あたりに相当しますが、流石に富士山のような過酷な環境ではありません。
中米での最高峰はグアテマラのタフムルコ山で4,220m、サザナミインコが多いと言われるコスタリカのチリポ山で3,820m。
南米側ではアンデス山脈の麓にあるエクアドルの首都「キト(Quito)」で標高2,850m。
エクアドルには海抜高度でエベレストよりも2.1km高い世界最高峰のチンボラソ山6,268mがあり、アンデスだと3,000m級ですら通常高度なのかもしれません。
また、中央アンデスの海岸側では標高500m~2,300mはケチュア語で「暑い谷」を意味する「ユンガ」と呼ばれる地域で、傾斜が厳しく平地は僅かの乾燥地域であり、熱帯作物の生産が主な産業となっています。
2,300m~3,500mは「ケチュア」と呼ばれる地域で、傾斜はなだらかで気候も涼しく夏は降雨のある雨季となり、トウモロコシの生産が盛んだそうです。
そして耕作地を荒らす害鳥と見なされるケースはあるようです。
サザナミインコが大移動するにあたり、高度,気温,湿度という環境要素はどれぐらい変化するのでしょうか。
分布域が広いため、参考とする基準をどこにするのかでも大きく違うと思われますが、ここでは中米ならコスタリカ、南米ではエクアドルを基準にします。
サザナミインコが分布する地域は概ね赤道に近い緯度の山岳地域です。
標高が高いため直射日光の日差しは厳しいながらも気温は涼しいぐらいで、日が遮られる森林内であればさらに年間を通して涼しく安定しているでしょう。
また、熱帯雨林や雲霧林の湿度は一年を通して常に100%と思われがちですが、のような場所ではありません。
コスタリカであれば12~3月頃は乾季となり熱帯サバナ林(乾林)になります。
南米側もエクアドルの中部海岸地域などにも熱帯サバナ林があります。
その乾燥期の湿度が如何ほどなのかを調べれていないのですが、雨が数ヶ月降らないとはいえ砂漠のような湿度にはならないでしょう。
コスタリカの太平洋側南部にあるコルコバード国立公園の玄関口では年間を通して概ね気温は23~33℃となっています。
コルコバードの森ではもっと変化が無いと思いますが、良いデータが見つからず。
エクアドルの首都キトでは一年を通じて1日の気温が概ね9~18℃で、季節によっての違いも2℃程度しかないそうです。
こうしてみると、標高差はともかく、気温や湿度に関しての環境変化は意外と少ないのかもしれません。
野生下において30℃以上になることはほぼ無さそうなので、飼鳥としてのサザナミインコは暑さに弱い鳥というのは頷けますが、寒さに凄く強いというのは疑問です。
野生の生息地についてはデータをもう少し揃えていずれ書き直します。
脂肪肝になりやすい
鼻腔炎や副鼻腔炎をこじらせやすい
鼻腔内や副鼻腔内が壊死した場合は、弁蓋も壊死して眼球も出目になってくる
ママ鼻水トッテは膿取りに使える
我が家での経験的にはバイトリルよりクロラムフェニコールが効くことが多い気がする
改訂は追々