2024年10月28日、IUCN(国際自然保護連合)の絶滅危惧種レッドリスト(Red List)が更新されました。
コロンビアで開催された第16回 生物多様性条約締約国会議(CBD-COP16)で発表されたものです。
IUCN日本委員会による現地レポートでは現地の雰囲気を垣間見ることが出来ます。
今回はメインは世界の樹種評価(Global Tree Assessment)ですが身近な動物の変動も目立ちます。
ナミハリネズミ(Erinaceus europaeus)が準絶滅危惧種としてLCからNTへ。
度重なる重油汚染での大量死も嘆かわしいケープペンギン(Spheniscus demersus)がENからCRへ。
遂に深刻な絶滅危惧種という位置付けに。
そして、今回の対象となったオウム目は3種です。
危惧レベルの格下げも含まれます。
- オオバタン:VU → EN
- ブルインコ:CR → DD
- オオダルマインコ:CR → LC
標準和名:オオバタン
標準英名:Salmon-crested Cockatoo)
学 名:Cacatua moluccensis
IUCN RED List:ENDANGERED(EN:絶滅危惧種)
2024.10/28 VU→EN
至高の白色オウム、オオバタンは絶滅危惧種であるとともに1989年にCITES I類へ登録された国際取引制限種です。
但しカテゴリは絶滅危惧種とされるCR、EN、VUでは下位の危急種VUでした。
1994年から長らくVUで踏み止まっていましたが、30年目にして絶滅危惧種ENへ変更されました。
主要因は生息地の消失(森林伐採、プランテーションなど集約農業の影響)。
そして鳥獣取引のための捕獲は、1980年代にセラム島だけでも年間10,000羽が捕獲されてきました。
そして1980年代にインドネシアから正規輸出された数は74,509羽が記録されています。
1959年以降の過去三世代で50~79%の個体が急速減少したことが評価されました。
近年の日本市場においては唯一の正規輸入元であるシンガポールのファームから2020年に1羽、2022年に2羽のみ。
ここの親は亡くなったと耳にしていたのですが果たして…
いずれにしても希少さが増しており、この高騰する下地は違法取引のフラグのため注目されます。
和名:ブルインコ
英名:Blue-fronted Lorikeet
学名:Charmosyna toxopei
IUCN RED List:DATA DEFICIENT(DD:データ不足)
2024.10/28 CR→DD
ブルインコが近絶滅種CRからデータ不足DD(Data Deficient)に変更されました。
ブルインコはインドネシアのモルッカ諸島で3番目に大きなブル島の固有種と考えられています。
1921年にトキソペウス博士が捕獲した7羽の記録のみが残る謎に満ちた種です。
ロマンと名声を求めてブルインコの捜索活動は行われてきましたが確証となる再発見はありません。
そんな中2014年に再発見の報せでインコ界を沸かせましたが、映像が不鮮明で信憑性に欠けるものでした。
そのまま10年経っても続報は無く、いよいよ今回のカテゴリ変更に。
再発見されたヒメフクロウインコのようにブルインコのロマンが結実することを願います。
和名:オオダルマインコ
英名:Lord Derby’s Parakeet
学名:Psittacula derbiana
IUCN RED List:LEAST CONCERN(LC:絶滅低懸念種)
2024.10/28 CR→LC
13年前の2011年にLCからNTへランク変更されたものが元のLCへ回復しました。
オオダルマインコの分布地はインド北東部のアルーナーチャル・プラデーシュ、中国のチベット、四川、雲南。
中国インド間のいわゆる係争国境地域あたり。
以前として緩やかな減少傾向ではあるものの、絶滅危機レベルは格下げとなりました。
要因の1つに密猟を阻む険しい高山地帯にも多く生息しており、過去三世代の減少が30%を占めるには及ばないという評価。
鳥獣市場には多く出回っていますが、繁殖は容易な部類でCB個体の増加も要因なのでしょう。
かつては日本でもよく流通していましたが、近年はすっかり見る機会が減っています。
ホンセイインコ属の魅力は飼い込まねばわからないかもしれませんが、とても素敵な種の1つです。。